アカウント営業とは?進め方や効果を出すためのポイントなど徹底解説
アカウント営業とは単なる販売活動を超え、顧客との深い信頼関係を築いて、課題解決の共有や解決策の提案を行いながら、ソリューションを提供する営業手法を指します。従来の営業手法と異なり、顧客一人ひとりのニーズを深く理解し、それに応じた提案やサポートを行うことが特徴です。
BtoBビジネスにおいて、顧客と企業が継続的に利益を共有するための重要な戦略として、近年注目されていますが、成果を得るためには、計画的なアプローチや持続的な努力が必要とされます。本記事では、アカウント営業の基礎知識や進め方、効果を最大化するための具体的なポイントまで、実践に役立つ知識を網羅的に解説します。
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目次
アカウント営業とは?
まず本章ではアカウント営業の基礎知識と他の営業スタイルとの違いを詳しく解説します。
アカウント営業とは顧客との信頼関係をベースにした営業手法
アカウント営業は、顧客との深い信頼関係を基盤に、共に課題解決の共有や解決策の提案を行いながら、長期的な価値を提供する営業手法です。一度きりの取引を目指す従来の営業とは異なり、顧客との信頼関係を長期的に築くことを目指します。単なる商品やサービスの提供にとどまらず、顧客の課題やニーズを深く理解し、継続的に最適なソリューションを提案するのが特徴です。
顧客とのつながりを深めながら課題解決に向けて取り組む本手法は、長期的にLTVやCV率の向上が期待でき、企業にとっても安定した収益基盤を築くことが可能となります。また各顧客に割けるリソースが増加するため、それぞれの顧客に合わせた最適な提案ができるというメリットや、信頼が強固になるほど、他社との差別化も容易になるという利点もあります。
ソリューション営業・ルート営業との違い
アカウント営業は、他の営業スタイルとどのように異なるのでしょうか?以下では、ソリューション営業やルート営業と比較し、その特性を明らかにします。
ソリューション営業とアカウント営業の違い
ソリューション営業は、特定の課題を解決するための具体的なソリューションを提供することに重点を置く営業手法です。特に顧客の課題を明確化し、自社の商品やサービスを提案するのが一般的です。
一方アカウント営業では、課題解決だけでなく、顧客との継続的な関係構築にフォーカスします。単発の成果にとどまらず、顧客の成長を長期的に支えるパートナーとしての役割を果たすのがアカウント営業の特徴です。そのためソリューション営業は、顧客との関係構築よりも、課題解決の提案を行う方が優先順位が高いと言えます。
ルート営業とアカウント営業の違い
ルート営業は、既存顧客を中心に定期的な訪問やフォローを行い、継続依頼や別商品・サービスの提案を行う営業スタイルです。ルート営業の場合は、自社製品をすでに導入している顧客が対象となります。アカウント営業は、ルート営業と比べてさらに深い顧客理解と戦略的なアプローチが求められる点が特徴です。顧客ごとにカスタマイズされた戦略を立案し、新たな課題やニーズを掘り起こしていく点が特徴です。
アカウント営業の進め方
アカウント営業を成功させるためには、顧客との関係を築くための計画的なプロセスが重要です。以下の6つのステップを通じて、顧客満足度を高め、持続可能な成長を実現しましょう。
STEP1. ターゲティング
最初のステップは、アカウント営業を行う対象となる顧客を特定する「ターゲティング」を行うことです。具体的には、顧客の業界動向や競合状況をリサーチして企業の情報を集め、収益性や成長性が見込める顧客を選定します。
また、ターゲティングをした後で、中長期的に「相手企業とどのような関係になっていたいか」というゴールを決めておくと良いでしょう。プロジェクト中に試行錯誤することがあっても、最終目標を定めておくことでブレずに進行することができます。さらに中長期的に取り組むため、それなりの工数が必須となります。そのため、各顧客にどのくらいの期間がかかるのかを考慮しておくことも大切です。
STEP2. 顧客が抱える課題の仮説を立てる
次に、顧客が直面している課題を予測し、それに基づく仮説を立てます。「企業が現在どのような課題を抱えているのか」を調査するために、以下のような情報を集めて分析を行いましょう。
- 経営計画
- メディアにおける業界・市場・企業データ
- IR情報
- 業界知識
実際のヒアリングを行う前に調査しておくことで、顧客からの信頼を獲得しやすくなるうえ、本質的な対話を進めることが可能になります。課題については今後ヒアリングを通して明らかにするため、この段階ではあくまで仮説を立てるだけで十分です。
STEP3. 顧客との関係性を深める
顧客との信頼関係を築くことは、アカウント営業の核心です。定期的なミーティングや情報共有など、実際に担当者とコミュニケーションをとって顧客のニーズを把握し、信頼関係を構築していきます。
特に、企業の代表や上位職者、管理者などの決定権を持ったキーパーソンと関係を築くことで、より本質的な課題に近づきやすくなります。相手の話をよく聞き、「何が企業の本質的な課題か」「自社に何ができそうか」を考え、真摯に向き合う姿勢を見せることが重要です。
STEP4. アカウント戦略を立案する
顧客の課題と目標を踏まえた上で、「自社商材と顧客の課題解決がどう結びつくのか」というアカウント戦略を設計します。この戦略は、具体的なアクションプランやリソース配分を含むものです。
アカウント戦略を立案する際に重要なのは、自社の利益や売上を優先するのではなく、顧客の課題解決を第一に考えることです。提案する内容が、相手企業の課題解決及び成果向上につながるものでなければなりません。顧客が自ら選べるように、複数の戦略を準備しておくことをおすすめします。
STEP5. 課題の共有・解決策の提案を行う
次に顧客と課題を共有し、それに対する具体的な解決策を提案します。提案内容の実現可能性や顧客へのメリットを明確にすることが重要です。
まずはどのように顧客の課題を解決できるのかを端的に説明し、そのうえで自社にできることや自社商材がどのような役割を果たすのかを伝える必要があります。課題を共有しながらじっくりと対話を重ね、お互いにベストな提案ができるように尽力することが大切です。
STEP6. 次の課題への提案を行い、関係性を拡大する
実施したソリューションの効果測定をして、分析結果をもとにレビューを行いましょう。課題解決後も次のステップを見据えた提案を行うことで、顧客との関係をさらに深めます。
新たな課題が見つかる場合や、同様の課題を抱えた他部門を紹介され、そこから関係性が拡大する可能性もあります。継続的な戦略プロセスを重ねていくことで、アカウント営業の効果の最大化や、自社の業績安定につながります。
アカウント営業を行うメリット
アカウント営業を行うことで得られる3つのメリットについて解説します。
顧客満足度や信頼度の向上
アカウント営業では、顧客一人ひとりに対してカスタマイズされたアプローチを行うため、顧客のニーズを的確に満たせるというメリットがあります。そのため、顧客は「自社のことをしっかり理解してくれている」と感じやすくなり、企業への信頼感や満足度が向上します。信頼が深まると、新たな課題が生じた際にも共有してもらえる可能性が高まり、リピート契約や追加発注などの継続的な受注や、長期的な信頼関係の構築につながります。
LTV(顧客生涯価値)の向上
アカウント営業は、顧客との関係を長期的に維持することを目的としているため、顧客一人あたりの生涯価値(LTV)を高める効果があります。単発的な売上だけでなく、継続的な契約や新たなプロジェクトの提案、サービスのグレードアップ、アップセルなど、顧客からの収益最大化が可能です。
また、新規事業やプロジェクトが始まる際にも、自社商材を購入してもらいやすくなります。LTVが向上することで、安定した売上基盤の構築が実現できます。
ノウハウを他の営業活動へも活かせる
アカウント営業で得られる顧客理解や提案スキルは、ノウハウとして蓄積され、他の営業活動にも応用できます。特に、顧客のニーズを深く掘り下げる手法や、課題解決型の提案スキルは、新規顧客の獲得やクロスセル戦略、営業活動の効率化にも役立ちます。
またアカウント営業で培った経験は、営業全体の質を向上させる役割も果たします。獲得した知見や経験を効率よく蓄積するために、MAツールやCRM、SFAなどのツールを活用するのもおすすめです。
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アカウント営業を行う際の注意点
アカウント営業は多くのメリットがある一方で、いくつかのリスクや課題にも注意が必要です。以下では、特に注意すべき3つのポイントを紹介します。
属人化のリスクがある
アカウント営業では、担当者と顧客の関係が深くなるため、その担当者がいなくなった場合に関係性が途切れるリスクがあります。属人化を防ぐためには、情報をチームで共有し、誰でも引き継ぎが可能な体制を構築することが重要です。他にも、複数の担当者を配属する、CRMデータを常に充実させる、引き継ぎの際には顧客の元に出向き、直接顔を合わせて挨拶をするなどの対応をすると良いでしょう。
中長期的に取り組む必要がある
アカウント営業は、短期的な成果を追求する営業スタイルではありません。顧客との信頼関係を築くには時間がかかるうえ、受注までの工数が多いため、結果が出るまでの期間を見越した計画が必要です。また、営業担当者の育成にも時間を要します。短期間での受注は見込みづらいという点を理解したうえで、長期的な視点で取り組むことが成功の鍵となります。
顧客への依存度が高い
主要顧客にリソースを集中させるアカウント営業では、特定の顧客への依存度が高いというリスクがあります。そのため一つの顧客に過度に依存すると、その顧客が離れることで大きな損失を被る可能性があるほか、一つの契約終了が大幅な収入減少を意味します。顧客との契約終了や解除を避けるため、定期的なコミュニケーションやフォローアップを行ったり、ポートフォリオを分散させてリスクを軽減したりする工夫が求められます。
アカウント営業で重要なスキル
アカウント営業を成功させるためには、特定のスキルが必要です。以下では、特に重要な3つのスキルについて解説します。
ヒアリング能力
顧客の課題やニーズを正確に把握するためには、高いヒアリング能力が求められます。ただ聞くだけではなく、適切な質問を通じて、顧客が気付いていない潜在的な課題を引き出す力が重要です。顧客にとって良いビジネスパートナーとなるために、受け身ではなく積極的に顧客のことや課題を知ろうとすることが、効果的な提案や長期的な信頼関係構築の基盤となります。
データドリブン思考
データドリブンとは、Webサイトやアプリ内における顧客の動きや、市場データ、販売履歴、イベント情報などを収集・分析し、そのデータを活用することを指します。情報を元に論理的な思考をする「データドリブン思考」も、アカウント営業では重要な能力です。数字や事実に基づいた客観的な提案を行うことで、説得力が高まり、顧客の信頼を得やすくなります。また、進捗状況を定期的に分析することで、アプローチの改善が可能になります。
仮説構築能力
顧客の課題を解決するには、まず課題を予測し、解決策を仮説として提示する力が必要です。主に以下の情報収集を行い、複数の可能性から仮説を構築していく能力が求められます。
- 顧客及び担当部門外の関係者からのヒアリングで得た情報
- 業界・市場に関するデータ
- 顧客が実施する業務の詳細や流れ
この仮説をもとに、顧客と議論しながら最適なソリューションを導き出す能力がアカウント営業の成果に直結します。多くの情報を収集して的確に分析し、効果的な解決法を提案しましょう。
効果的なアカウント営業を行うポイント
アカウント営業を成功させるためには、単に顧客と関係を築くだけでなく、戦略的な取り組みが重要です。以下では、効果を最大化するための具体的なポイントを解説します。
徹底した情報管理
アカウント営業の基本は、顧客に関する情報を正確かつ適切に管理することです。顧客の業界動向、課題、ニーズ、過去の取引履歴などを詳細に把握し、一元管理することで、営業活動の精度を高められます。
顧客情報を管理する際には、CRM(顧客関係管理)ツールの活用が有効です。営業チーム全体でデータを共有しやすくなり、個別の担当者に依存するリスクを軽減できます。また、万全なセキュリティー対策も必須となります。特に個人情報は徹底的に管理・保管しましょう。
良好な関係構築
顧客との信頼関係を築くことは、アカウント営業における最重要課題の一つです。一度構築した関係を維持し、さらに深めていくためには、定期的なコミュニケーションが欠かせません。顧客のニーズを理解するだけでなく、彼らのビジネス成功に寄り添う姿勢を示すことで、長期的なパートナーシップを築けます。単なる製品やサービスの提案ではなく、顧客の課題解決に真摯に取り組むことが、信頼度を高めるカギです。
課題の優先度を決める
アカウント営業では、顧客が抱える課題をすべて解決しようとするのではなく、優先度を明確にすることが重要です。課題の優先度を決めるには、顧客とのコミュニケーションを通じて相手のニーズを深く理解する必要があります。
緊急度や重要度が低い課題の解決は却下される可能性が高いため、優先度を決めて最も重要度が高いものから提案しましょう。その上で、自社のリソースを最適に配分し、効果的なソリューションを提供することが重要です。
まとめ
本記事では、アカウント営業の基礎知識や進め方、効果を最大化するための具体的なポイントまで網羅的に解説しました。アカウント営業は、顧客との信頼関係を基盤に、長期的な利益を共有する営業スタイルです。その成功の鍵は、徹底した情報管理、信頼に基づいた良好な関係構築、そして顧客課題の優先順位付けにあります。
これらのポイントを押さえることで、アカウント営業の可能性を最大限に引き出し、顧客と共に成長するパートナーシップを実現できます。顧客との関係を深められたら、ビジネスのさらなる発展も見込めるはずです。
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監修者
クラウドサーカス株式会社 石本祥子
新卒でコンサルティング会社に営業職として入社。3年で営業所長代理を経験後、ベンチャー企業を経て、クラウドサーカス社にマーケティング職として入社。
営業とマーケティング、いずれの経験もあることを活かし、クラウドサーカス社が提供しているMAツール『BowNow』において、マーケティングと営業に関するメディアの監修を含む、Webマーケティングの全域を担当している。