営業戦略とは?立案の仕方5ステップと5つのフレームワーク
営業戦略とは、企業が利益を出すための目標に到達するためのアクションを営業担当目線で示した方策で、事業を成長させるために欠かせないものです。自社の営業戦略を立てたものの、正しく立案できているのか不安な方も多いのではないでしょうか。
本記事では、マーケティング側面から営業戦略の見直しを行うメソッドをはじめ、営業戦略を立てるにあたって有用なテンプレートや、上流フレームワーク、実際の進め方などをポイントを交えて紹介します。
営業生産性を上げる“攻め”のDXとは
近年、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが進み、その対応が急がれています。本書では、セールス&マーケティング領域で必要なDXと実現のためのおすすめステップについて解説しています。
目次
営業戦略とは?営業目標達成に向けたシナリオのこと
営業戦略とは、企業が営業目標の達成のために定めるシナリオのことです。事業を成長させるために欠かせない、営業活動の指針となる重要なものであるといえます。
営業戦略を立てることによって、目標達成に向けてやるべきこととそうでないことを明確にすることができます。限られた経営資源を活用し、高い売上額や利益を生み出すためには、クオリティの高い営業戦略が欠かせません。
営業戦略と営業戦術の違い
営業戦略とよく混同されるものに、「営業戦術」がありますが、両者の定義は異なります。それぞれの定義について見てみましょう。
・営業戦略:企業が営業目標の達成のために定めるシナリオのこと ・営業戦術:営業戦略に沿って、具体的に目標を達成させていくための具体的な手段や方法 |
どんなに崇高な戦略を立てることができたとしても、成約に繋がりやすい戦術を設計し実行できなければ、最終的な企業の売上や利益には結びつきません。逆に、戦略のない戦術だと、場当たり的な営業活動に陥りやすく、売上や利益を効率的に生み出すことができないばかりか、例えばそういった活動に疑問を感じたプレイヤーの離職を引き起こすなど、組織の未来にマイナスの影響を及ぼしてしまいます。両者の定義は異なりますが、目標達成にあたって強く関係し合っているのです。
それぞれが、具体的かつ成功する確率の高い状態で設計されており、かつ噛み合っていることで、売上や利益の獲得に繋がる戦略・戦術として機能するでしょう。
営業戦略の立て方5ステップ
では、実際に営業戦略を立てるには、どのようなステップを踏み、進めていけば良いのでしょうか?本章では、営業戦略を立てる際の流れを、大きく5つのステップにわけてご紹介します。
STEP1. 企業の最終目標から逆算して目標設定する
企業には、「企業として最終的に達成したい目標」、つまりKGI(Key Goal Indicator)が存在します。
営業戦略とは、このKGIから逆算して、「営業組織が達成すべき売上目標」と「その目標を達成させるためのシナリオ」を具体的に描いていくものです。以下は、その例になります。
上年後に売上目標50億を達成させるために、製造業とIT業界をコアターゲットとしたソリューション営業チームを立ち上げ、ターゲット業界における市場シェア3%を目指す。 |
上記のような営業戦略を描こうにも、まずは目標がなければ、何をどのくらい達成させる必要があり、そのために何をしなければならないのかといった「達成させるためのシナリオ」も具体的に考えることができなくなってしまうため、営業戦略を立てるうえではまず、目標の設定から始めましょう。
STEP2. 市場と自社について整理する
営業戦略を立てるには、自社のいま置かれている状況を、あらゆる側面から正しく把握する必要があります。自社の置かれている状況を理解することで、STEP1で定めた目標を達成するために、自社が何を解決しなければならないのか、あるいは改善しなければならないのか、見えてくるためです。
・外部環境:市場や社会情勢といった「自社のまわりを取り巻く環境」 ・内部環境:自社の経営資源(人・もの・金など)や昨今の事業の成長状況といった「自社の中の環境」 |
自社の置かれている状況は、主に以上の2つに分けて考えることができます。専用のフレームワークなども活用し、それぞれについて理解を深めていきましょう。
外部環境
外部環境とは、企業のまわりを取り巻く状況を指し、大きく「マクロ環境」「市場環境」「競争環境」の3つに分類されます。営業戦略はもちろん、企業のあらゆる戦略の策定において、これら3つを見落とさないことは、非常に重要であると言われています。
フレームワークなどで整理する際は、必ず「定量」と「定性」の両方の情報を集めることをおすすめします。いずれも重視した情報の整理を行うことで、解像度高く外部環境について理解することができます。
内部環境
内部環境とは、人・もの・カネ・情報といった「自社が保有している経営資源」の状態のことです。また、それらについて詳しく情報を整理し分析することを、内部環境分析といいます。内部環境分析は、外部環境分析と同様、以下のフレームワークで行います。
STEP3. 顧客を深く具体的に理解する
自社の置かれている状況や、自社の内情について理解ができたら、自社のターゲットの顧客について理解を深めていきます。顧客について深く理解するには、定量と定性の両方の調査が必要です。また、顧客について調査ができたら、自社にとって理想の顧客像である「ペルソナ」を作成します。
STEP4. 目標達成に向けた課題を明確にする
自社や自社を取り巻く環境、そして顧客について理解できたところで、STEP1で考えた目標を達成するにあたって解決しなければならない課題を考えます。
課題は、目標達成するにあたり、障壁になっている「壁」というイメージを持ってください。これを明確化することで、何を解決もしくは改善すれば目標を達成できるのかという、現実的な筋道が見えてきます。
ちなみに課題は、「いつまでに」「どのターゲットに」「どのくらい」と、5W1Hのように具体的に洗い出していくことがポイントです。課題が具体的であるほど、解決策を講じる際の解像度が高くなり、着実に成功へ進んでいきやすくなります。
STEP5. 成果指標を決める
課題を明確化できたら、その課題を解決できているのかどうか、実務の過程で評価・判断するための成果指標を設定します。成果指標は、基本的には定量的な指標を採用します。
例えば、STEP1で紹介した営業戦略の例では、売上目標を達成するために、特定の業界における開拓活動を強化し、市場シェア3%を目指すとあります。成果指標とは、この3%を達成するために「毎月〇件(〇〇円)、〇〇業界で受注する」「そのために毎月〇件、〇〇業界の企業との商談を獲得する」「そのための日々のアクション目標として、〇〇件のアプローチをする」といった日々の活動で具体的に達成すべき指標と数値のことです。
すべての成果指標は、最終的な営業目標と紐づくものでなければなりません。最終的な営業売上目標から、必ず逆算して設定するようにしましょう。
営業戦略に役立つ上流フレームワークと進め方
営業戦略を的確に行うためには、様々な要素や情報を順番に整理・網羅していきながら考察や検討を進める必要があります。本章では⼀例として、代表的な6つのフレームワークを組み合わせて、以下の順に進めていく⽅法を詳細に解説します。
PEST分析
PEST分析とは
PEST分析のPESTとは、「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4つの頭⽂字を取ったもので、⾃社業界のビジネスが影響を受ける世の中全体の変化を4つの要素から分析・把握することを指します。マーケティングにおける環境把握として、自社の業界を取り囲むマクロ環境を中⻑期的に把握・洞察するPEST分析は、営業戦略立案において大事な1つ目のフレームワークです。
PEST分析のポイント4つ
PEST分析の進め⽅としては「1.仮説思考で中⻑期的な視点に立つ」「2.マクロ環境トレンドの4つの関連性を考察」「3.変わったことと変わってないことの見極め」「4.⼀時的トレンドではなく中⻑期的な構造変化の見極め」の4つのポイントに注意して進める必要があります。
①仮説思考で中⻑期的な視点に立つ 中⻑期的な将来、大体3〜5年後の世の中のマクロトレンドついて仮説を⽴て、業界に及ぼす影響や環境変化について考えます。
②マクロ環境トレンド4つの関連性をクロスして考察する 個々のPEST分析項⽬に加えて、「政治」「経済」「社会」「技術」のPEST分析の4項⽬の関連性を⾒ることが大切です。
③変わったことと変わってないことを⾒極める ⼀時的な変化でなく「何が変わったか、また将来変わっていくか」また逆に「何が変わっていないか、将来も変わらなそうか」のトレンドを⾒極める必要があります。
④⼀時的なトレンドではなく中⻑期で構造が変化するものを⾒極める 「⼀時的なもの=中⻑期間では変化がないもの」と「⼀時的ではなく、中⻑期の構造的に変化するもの」をしっかりと区分することがポイントです。 |
3C分析
3C分析とは
3C分析の3Cとは、「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(⾃社)」の3つの頭⽂字を取ったもので、⾃社を取り巻く業界環境を抜け漏れなく把握して整理することを指します。
徹底的に「事実」を集めるとともに、ネット上の情報などにとどまらず、⾃⾝の⾜で⽣きた情報を丁寧に収集することが重要です。それぞれのCについての観点は具体的に以下のものが挙げられます。
市場環境 市場規模や市場の成⻑性、顧客のニーズ、顧客の消費⾏動 など
総合環境 競合各社のシェアや特徴、参⼊や代替の脅威、業界ポジション など
自社環境 理念やビジョン、事業や製品の現状(資本⼒や投資能⼒)、保有するリソース(ヒト・モノ・カネなど)、現在のビジネスの特徴など |
3C分析のポイント3つ
「3C分析」は次のステップである、集めた情報で考察を行う「SWOT分析(後述)」の元となる情報収集の役割を果たすため、できる限り「事実」を正確に集めることが重要です。さらに、インターネットなどの定量的な統計データだけでなく、ヒアリングや顧客の観察など、定性的なデータ収集も行う必要があります。
①3C分析では事実を集める 集めた事実に対する解釈は、もう次段階のフレームワーク「SWOT分析」にて⾏うため、「事実」と「解釈・意⾒」は明確に区別して整理することがポイントです。
②3C分析情報は⾃分の⾜で集める 「SWOT分析」で戦略を立てていく際、判断するための情報が⾜りずに⾃分の⾜で収集する必要が出るため、⾃分で集めた生の情報をより多く持っておくことが大切です。
③BtoBの場合は顧客業界の3C分析も⾏う 顧客を理解することはマーケティングの出発点であり、法⼈営業・BtoBマーケティングでは、まず顧客業界の3C分析が必要とされています。顧客業界の3C分析+⾃社業界の3C分析で、6C分析とも⾔われており、良質な営業戦略では欠かせないポイントです。 |
SWOT分析
SWOT分析とは
SWOT分析とは、「強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)」の頭⽂字を取った、戦略⽬標を導出するためのフレームワークです。
前段階の「PEST分析」「3C分析」で集めたファクトを4つの要素に分けて、俯瞰的な視点に立って多⾯的な考察を繰り返し、特に重点的に取り組むべきテーマを見つけ出します。
SWOT分析のポイント3つ
SWOT分析では、4つの視点から導き出されたメッセージを俯瞰することによって、⾃社にとって重点的に投資をすべき「戦略⽬標」を絞り込む必要があります。4つの視点をクロス、または複合するなど、あらゆる⾒⽅を通して⼗分に分析・考察を⾏うことが重要です。
①組み合わせ解釈を⾏う 要素単体だけでなく「強み・弱み・機会・脅威」を、マトリックスで組み合わせて解釈することで、多⾯的な分析や考察を行うのがポイントです。
②同じ事実情報から複数の解釈を引き出す 「同じ事象をとっても、⾒⽅を変えれば強みにも弱みにもなる」場合があります。まずは様々な⾒⽅で複数の解釈を引き出し、最後に戦略⽬標を絞り込むと良いでしょう。
③「オプション思考」で複数案を導出する 1つ1つの事実も組合せによって様々に解釈できるため、決め打ちにせず、いったん複数の戦略⽬標を導出します。戦略⽬標のあり得るオプションを洗い出した上で、最後に最適な選択肢を選ぶことが大切です。 |
4P分析
4P分析とは
4P分析とは、「どんな商品を・いくらで・どのように・どこで」販売するのかを考えるために活用する、マーケティング戦略のフレームワークです。以下の4つの言葉の頭文字から名付けられています。
Product(製品) どのような商品・サービスを提供するのか
Price(価格) どのような価格で提供するのか
Place(流通) どのような経路で提供するのか
Promotion(販売促進) どのように販促を行うのか
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4C分析
4C分析とは
4C分析とは、「顧客にとっての価値」「顧客の納得できるコスト」「顧客にとって有益な情報」「顧客にとって便利な入手経路」について考えるマーケティング戦略のフレームワークです。以下の4つの言葉の頭文字から名付けられています。先述の4P分析だけだと、企業視点のマーケティング戦略に偏る可能性があるため、企業視点では4P分析、4C分析では顧客視点で、4つの要素がそれぞれ対になるように実施します。
Customer Value(顧客価値) 顧客の感じる価値
Cost(顧客にとっての経費) 顧客の納得できるコスト
Communication(コミュニケーション) 顧客にとって有益な情報
Convenience(入手の用意性) 顧客にとって便利な入手経路 |
まとめ
本記事では、マーケティング側面から営業戦略の見直しを行うメソッドをはじめ、営業戦略を立てるにあたって有用なテンプレートや、上流フレームワーク、実際の進め方などをポイントを交えて紹介しました。
実際に営業戦略を立ててみたものの、効果を実感できない方や本当に正しく立案できているか不安な方でも、本記事で紹介したテンプレートや、かなり詳細な上流フレームワークを活用することで、効率的な見直しに役立ちます。
営業生産性を上げる“攻め”のDXとは
近年、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが進み、その対応が急がれています。本書では、セールス&マーケティング領域で必要なDXと実現のためのおすすめステップについて解説しています。
監修者
クラウドサーカス株式会社 石本祥子
新卒でコンサルティング会社に営業職として入社。3年で営業所長代理を経験後、ベンチャー企業を経て、クラウドサーカス社にマーケティング職として入社。
営業とマーケティング、いずれの経験もあることを活かし、クラウドサーカス社が提供しているMAツール『BowNow』において、マーケティングと営業に関するメディアの監修を含む、Webマーケティングの全域を担当している。