営業の属人化を解消する5つの方法!原因とツール活用事例・改善のポイントも解説

営業の属人化は、特定の営業担当者だけに知識やノウハウが偏ってしまい、依存した状態になる問題です。属人化が進むと、チーム全体の成果が個人の能力に左右され、再現性のあるノウハウも蓄積されず、業務の効率や組織力の低下につながります。
本記事では、営業の属人化がなぜ問題となるのか、その原因や影響を整理したうえで、具体的な解消方法を解説します。さらに、ツールを用いた解消事例と改善のポイントなど、組織全体で属人化を防ぐためのヒントをまとめました。

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目次
営業の属人化とは
営業の属人化とは、営業活動に必要な情報や手法が組織全体で共有されず、特定の人物しか業務を把握していない状態を指します。顧客とのやり取りや進捗状況を担当者しか把握していないため、業務が「その人しかできない仕事」になってしまうのです。
トップセールスが成果の大半を担う状態であれば、その人が異動や退職をした場合、売上が大きく落ち込む危険性があります。また属人化してしまうことで、新人教育に必要な知識が蓄積されず、効率的な育成が難しくなるという問題もあります。属人化の状態は、短期的に見ると「業務が順調に回っている」と思うかもしれません。しかし、長期的に見ると利益率の低下やリスク増大を招きます。
営業の属人化がなぜ問題視されるのか
営業の属人化は、組織運営に深刻な影響を与えます。具体的には、以下3つの問題が生じます。
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営業活動の管理が難しくなる
属人化が進むと、担当者ごとに進め方が異なり、アプローチ方法が標準化されないため、営業活動を統一的に管理できなくなります。その結果、成果の分析や改善がしづらく、マネジメントの精度も下がります。さらに、担当者独自の進め方でやり取りをしている場合、他の人が途中から引き継ぐことは困難です。担当者が不在のときに顧客から問い合わせがあっても、他のメンバーは状況を把握できず、対応が遅れてしまいます。こうした状況は、顧客満足度の低下や信頼喪失につながる大きなリスクになります。
社内にノウハウが蓄積されない
営業の属人化は、組織全体で知識や経験を積み重ねられない点も大きな問題です。効果的な商談の切り口を見つけても、それをチームに伝えなければ、同じ課題に対してメンバーがそれぞれ試行錯誤を繰り返すことになります。
また、属人化によりノウハウが蓄積されていないと、新人教育にも影響します。組織としての知識や経験が共有されない状態は”ノウハウの言語化”も進んでおらず、「先輩のやり方を見て学ぶ」OJTになりがちです。そして、指導内容が指導員ごと異なるため、教育効果にばらつきが出て、新人の独り立ちまでに時間がかかります。その間に受注の機会を逃すことも少なくありません。
さらに、引き継ぎ時にも問題が生じます。顧客情報や進行中の案件内容が整理されていないと、ヒアリングに時間を要し、対応遅れやトラブルの原因となります。
チーム全体の業務効率に影響する
属人化は、チーム全体の生産性を下げる要因になります。担当者ごとに営業手法が異なることで、成功体験が共有されず、組織的な成長が妨げられるためです。さらに、営業担当者が受注数を上げようとして自分の裁量で価格交渉を行い、過度な値引きや不利な契約条件を結んでしまう、といったリスクも潜んでいます。
また、属人化が進んだ状態では「誰がいなくても回る仕組み」が作れません。そのため、異動や退職があるたびに業務が滞り、全体の効率が落ちる結果となります。
営業の属人化が起きる原因
営業の属人化は、担当者しかわからない業務や情報が増えることで起こります。その主な原因は以下3つです。
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情報やノウハウの共有不足
情報やノウハウの共有の共有体制が整っていないと、営業活動で得られた知識や経験が共有されず、属人化が進みます。特に、成果が個人の評価や報酬に直結する環境では、情報を積極的に共有する動機が弱く、各担当者が独自のやり方で営業を進めがちです。その結果、組織内に知識が蓄積されない状況が生まれます。また人員が不足しており目の前の業務に手一杯という環境では、情報共有を行う余裕がなく、属人化になりやすいため注意が必要です。
営業プロセスが標準化されていない
営業の進め方がマニュアル化されず、標準化されていないと属人化を招きます。担当者ごとに独自のやり方で進めるようになり、業務が経験豊富な営業担当の勘や個人スキルに依存する形になる(ブラックボックス化する)ためです。アプローチ方法や商談の流れが統一されていなければ、新人教育にもばらつきが出てしまいます。営業プロセスを整理し、誰でも同じ流れで業務を進められる体制の整備が欠かせません。
評価制度や組織体制の問題
評価や組織の仕組みそのものが、属人化を促してしまうこともあります。例えば、成果を完全に個人の売上で評価する制度は、同僚が競争相手となり、情報を共有するメリットが弱くなります。成果をあげるハイパフォーマーほど、自分のやり方を公開しなくなります。さらに、教育や育成を体系的に行わず、現場任せのOJTに頼る組織も属人化の温床となります。指導者が忙しく片手間で対応すると、ノウハウの共有が不十分になり、再現性のある育成ができません。組織全体でノウハウを活かす仕組みを整備しない限り、営業の属人化は避けられないでしょう。
営業の属人化を防ぐ具体的な方法
営業の属人化を防ぐには、組織として統一された仕組みを整えることが大切です。ここでは、営業の属人化を防ぐ5つの方法を紹介します。
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①目標を明確にする
属人化の解消・防止を考えるときに、まず行いたいのが目的の明確化です。「営業の属人化を解消する目的」を明らかにして、営業組織として「何を達成するのか」を言語化します。例えば、「受注率が低い担当者を来期までにゼロにする」「新人が半年以内に受注できる仕組みを作る」といった具合に、数値と期限を含めたゴールを設定します。
目的があいまいでゴールに近づいている実感がないと、施策を実施しただけで達成感を得て、時間の経過とともに意識が低下しやすくなります。目標を定めることで、属人化の解消が一時的な施策で終わらず、継続的な改善活動へと変わっていきます。
②営業フローを統一する
営業活動はアポイント、商談準備、ヒアリング、提案、クロージングといった複数の段階に分かれます。属人化を防ぐポイントは、それぞれの段階における進め方を定義し、誰が担当しても同じ水準で営業できるようにすることです。
例えば、初回商談では「挨拶3分」「顧客ニーズの確認10分」「サービス説明10分」「質疑応答10分」など、流れと時間配分をあらかじめ決めておくと、経験の浅い担当者でも一定の成果を出しやすくなります。あわせて、最適な話し方や効果的な受け答えをまとめた「ケース別の商談トーク」なども用意しておくと良いでしょう。営業フローを統一することで、組織全体の営業力が底上げされ、個人の勘に頼る状況を減らせます。
③情報共有とナレッジ蓄積の仕組み作り
営業担当者が持つ知識や経験を組織に残すことも欠かせません。「どの資料を提示したか」「商談で顧客が示した反応」「提案がうまくいった事例」などを記録し、共有できる仕組みを整えることが必要です。初めから全てを管理するのは現実的ではないので、まずは、取引先情報や商談履歴など優先度の高い項目から始めてみてください。共有内容に応じて評価や特典を付ければ、情報を積極的に出す文化も根づきます。
共有する仕組みと共に、共有のしやすさを整えることも大切です。SFAやCRMなどの営業管理ツールを導入すれば、外出先からでも情報更新ができ、共有の負担軽減につながります。こうした仕組みを作ることで、個人のノウハウが会社の資産に変わり、属人化を抑える効果が高まります。
④評価制度とルールの整備
営業の属人化を防ぐには、情報共有の流れや営業プロセスをルールとして整えます。
ルール整備の具体例
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こうした取り組みは、最初は手間がかかり協力を得にくいかもしれません。しかし、成功体験が積み重なることで有用性を理解してもらえます。コツコツと続けることが大切です。
評価制度の場合は、売上や数値のみの評価など、結果に偏った評価制度や過度な競争環境は属人化を招きます。競争を煽りすぎていないか確認したり、成果だけでなくプロセスや協力の姿勢を評価したり、個人競争に陥らないような工夫をしたりすることも大切です。評価制度を見直すことで、社員は情報共有や協力に意欲的になり、属人化を抑えながら組織文化を育てられます。
評価制度の見直し例
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⑤属人化防止策を社内に浸透させる
制度やルールを整えただけでは、属人化防止策は浸透しません。社員に「あるべき営業像」を目指してもらい、積極的に行動してもらえるように啓蒙活動を行います。
具体例
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こうした日々の啓蒙活動は、制度の形骸化を防ぎ、組織全体で属人化を防ぐ文化の定着にも貢献します。

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MAツールの導入で営業属人化は解消できる!
属人化を効率的に解消したいなら、ツールを導入するのもひとつの手段です。なかでもMA(マーケティングオートメーション)は、導入が属人化の解消につながったという実際の事例が確認されています。
MAツールとは? マーケティングや営業活動を自動化するために開発されたツールで、顧客情報の一元管理、メルマガ配信の自動化、ウェブサイト訪問履歴の取得など、さまざまな機能を備えています。 |
そもそも属人化の原因は、顧客情報や進捗の共有不足や、営業プロセスが担当者の経験や勘に依存し、「誰にいつどんなアプローチをすべきか」といったノウハウがブラックボックス化する点にあります。MAを導入すると、次のような形でこうした属人化防止に役立ちます。
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MAツールは情報共有を容易にすると共に、従来担当者の頭の中にあった判断基準を可視化し、営業プロセスのブラックボックス化を防ぎます。その結果、業務の標準化や顧客対応の品質を一定に保つ効果も得られます。ただし、導入するだけで完全に属人化が解消されるわけではありません。社内文化や情報共有の仕組みづくりとあわせて取り組むことが重要です。では次に、MAツールを使い属人化解消を行った活用事例を紹介します。

【事例1】情報共有がスムーズになり、データを「会社の資産」として蓄積できるように
クリエイティブ事業やWeb事業、AI事業、流通小売向けコンサルティングやDX導入支援などを展開する印刷会社様の属人化対策事例を紹介します。同社は、営業担当が顧客情報を各自で管理しており、営業担当が退職してしまうと、見込み顧客の情報は同時に失われてしまう状態でした。営業報告は月に数回行っているものの、日々の営業行動の把握まではなかなか難しく、顧客へのアプローチが営業個人のスキルに依存してしまうのも課題に感じており、体制を変えようと思いMAツールを導入しました。
導入後は、営業担当者が持っている名刺情報をツールに取り込みデータの資産化を行いました。各営業担当に日々の活動状況を登録してもらい、ツール上で営業活動を一目で把握できるようにもしています。またツールを使うことを主軸として、リード獲得から育成、選別までのプロセスを各部門と連携しながら体制を整えることで、属人化の解消を行いました。
事例詳細はこちら:MAを軸にした営業体制を構築し、20件の資料請求・商談創出を実現!見込み顧客の行動をBowNowで把握、検討度の高い顧客へのアプローチが可能に|福博印刷株式会社様
事例2:属人化を防止し営業効率が向上。半期の受注金額をしのぐ、約800万円の売上を達成
採用支援を主軸とする人材サービス会社様の事例を紹介します。営業活動が個々の営業担当者に依存しており、担当者の退職や異動の際に顧客情報の引き継ぎがスムーズに行えないという課題がありました。あわせて、顧客データを膨大に保有しているものの有効活用ができていない、という課題もあり、問題解決のためにMAツールを導入しました。
ツール導入後は、イベントやWebサイト、営業活動で集めた顧客情報をMAツール上に登録して、一元管理を行います。また「打ち合わせ打診メール」として、営業担当者から直接顧客に送信するOne to One形式のテキストメールを採用。
ツールを活用して宛名の差し替えを行い、誰もが同じ水準で、効率的に顧客とコミュニケーションをとれる体制を整備し、営業効率を向上させました。こうした施策を取り入れた結果、メール配信で、これまでの半期の受注金額をしのぐ約800万円の売上を上げています。
事例詳細はこちら:メール配信施策で年間目標223%達成!1回のメールで800万円の売上を生んだMAツール活用術|人材サービス・100名規模企業様
営業の属人化解消に向けて"よくある失敗例と改善のポイント"
属人化解消に向けた取り組みは、よく失敗に終わることがあります。例えば、以下は起こりやすい失敗例です。
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マニュアルや改善策を導入しても、一部の人だけが活用し、効果が持続しないケースがあります。また、商談用のトークスクリプトやマニュアルを作っても、忙しい営業担当が日々の業務で使わず古くなり、結果、せっかく作った型が「使えないもの」となってしまうケースもみられます。こうした状況に陥った場合、適切な対策をしないと、属人化から抜け出せません。
改善のポイント
ではどうしたら、失敗から抜け出して属人化の改善が行えるのでしょうか。ポイントを以下でまとめました。
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「改善策を導入しても、一部の人だけが活用し効果が持続しない」といった問題の多くは、問題を具体化していないことが原因です。対策だけが先行し問題を理解していないと、ゴールが定まらず現場に定着しません。「属人化」という漠然とした課題ではなく、どの部分で問題が起きているかを明確化して取り組むことで、ブームではなく本当に必要な施策として浸透します。
「型を整備しても運用されない」という問題は、PDCAの運用が欠けていることが多くの原因です。人は慣れると型を省略しやすく、定期的なレビューと更新の仕組みがないと陳腐化してしまいます。属人化対策を実施したら四半期ごとの見直しを行うなど、「使う・チェック・改善」を回す体制を定着させることも大切です。また、忙しい営業担当者でも負担を感じないよう、使いやすさを重視したマニュアル整備も行いましょう。
まとめ
営業の属人化は、組織の成果を一部の担当者に依存させ、長期的な安定を損ないます。管理のしづらさ、ノウハウの欠如、効率低下というリスクを抱えるため、解消に向けた取り組みが欠かせません。属人化が進むと簡単には解消できないため、早い段階で仕組み化や情報共有を進めることが重要です。
MAツールは情報の一元管理ができ共有も簡単に行えるため、属人化対策に有効なツールです。さらにMAツールは、成果創出のためのさまざまな機能を備えています。属人化対策も行いつつ、さらなる成果を目指したいときにもおすすめです。興味がある方はぜひ導入を検討してみてください。
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監修者
クラウドサーカス株式会社 石本祥子

新卒でコンサルティング会社に営業職として入社。3年で営業所長代理を経験後、ベンチャー企業を経て、クラウドサーカス社にマーケティング職として入社。
営業とマーケティング、いずれの経験もあることを活かし、クラウドサーカス社が提供しているMAツール『BowNow』において、マーケティングと営業に関するメディアの監修を含む、Webマーケティングの全域を担当している。