DXの課題と解決策とは?推進の手順8ステップ・成功事例を紹介
近年、企業にとってDXは必須の取り組みとなっています。しかし、多くの企業が課題に直面し、推進に苦戦しているのが現状です。2025年までにDXを推進しなければ、最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるという「2025年の崖」が迫る今、企業の将来を守るためには、DX推進を正しく理解し、自社の課題に合った対策を模索することが求められます。
本記事では、DX推進の現状と課題、正しいDX推進の手順、DX推進でよくある失敗、DX事例、DXに役立つツールなどを解説します。
営業生産性を上げる“攻め”のDXとは
近年、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが進み、その対応が急がれています。本書では、セールス&マーケティング領域で必要なDXと実現のためのおすすめステップについて解説しています。
目次
DXの現状と2025年の崖
DX(デジタルトランスフォーメーション)の現状と課題を語るうえで欠かせないのが、「2025年の崖」と呼ばれる2025年問題です。
経済産業省は、2025年までに企業がDXを推進しなければ、最大12兆円の経済損失が発生する可能性があると示唆しています。これは、デジタル化社会への適応が遅れた企業が市場競争力を失い、淘汰される可能性を指しています。
さらに、「古いシステムに依存することで維持管理費が高額化する」「保守運用の担い手が減ることで、サイバーセキュリティ問題が増加する」などのリスクも指摘されています。
欧米や中国などは日本よりも早くからDXに取り組み、大きな成果を上げています。このまま何も対策を取らなければ、差はさらに広がるでしょう。2025年以降は、DXへの対応状況が企業の存続を左右する重要な要素になると予想されます。
2025年の崖を乗り越えるためには、今すぐDX推進に取り組むことが重要です。しかし日本では、多くの企業がDX推進にあたってさまざまな課題に直面しており、進捗状況は企業によって大きく異なります。
DX推進の課題と解決策
DX推進で多くの企業が直面する課題と解決策を以下で詳しく解説します。
DX人材が不足している
DX推進には、デジタル技術に関する専門知識やスキルを持つ人材が必要です。しかし、近年需要が高まっているDX人材は慢性的に不足しており、確保が困難な状況になっています。採用や外部からの協力が難しい場合は、社内で人材を育成することも大切です。
- 社内研修やeラーニングなどで、社員のデジタルスキルを育成する
- コンサルタントやフリーランスなどの外部人材を活用する
- DX推進に特化した人材派遣サービスの活用
セキュリティ対策に不安がある
DXが進むと、サイバー攻撃、情報漏洩に対する不安が高まります。被害を防ぐためには、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。しかし、専門知識やノウハウ不足により、十分な対策を講じることができていない企業も多く存在します。
この問題の解決策としては、以下のような取り組みが考えられます。
- 社員へのセキュリティ教育を定期的に実施する
- セキュリティ対策部門を設置し、専門家を配置する
- 最新のセキュリティ対策ツールを導入する
DXへの積極投資ができない
DX推進には、システム導入や人材育成など多額の費用がかかります。予算の制約から積極的に投資できない企業も少なくありません。解決策としては、以下のような取り組みがあります。
- DX推進の具体的な効果を数値化し、重要性を経営層に理解してもらい、投資を確保する
- 一気にすべての業務をデジタル化しようとせず、長期的な視点に立った投資計画を策定する
- 政府や自治体からの補助金や助成金を活用する
DX推進を阻む大きな理由の一つに、レガシーシステム(長年稼働してきた古いシステム)があります。レガシーシステムはデジタル技術との連携が難しく、今後、DXの阻害要因になるでしょう。DX推進を目指すなら、古いシステムからの脱却が必要です。
DXへの理解が不十分
DXの成功は、周囲の理解にかかっています。しかし、システムを導入すると、覚えることが増える、新しい作業が発生する、慣れるまで効率が低下するなど、一時的に社員の負担が増加し、反発を招く場合があります。
DXは単なるITツールの導入ではなく、組織全体の文化や風土を変える取り組みです。経営層だけでなく、現場の社員一人ひとりの理解を促進するために行動しましょう。
- DXに関する社内コミュニケーションを活性化し、社員の理解を深める。社内研修や勉強会を実施する
- 社内報などのコミュニケーションツールを通じてDXに関する情報を発信する
- DX推進における成功事例を共有する
組織の課題
DX推進における課題は、経営層と現場の両方で存在します。
経営層の課題
近年、DXの課題として多く見られるのが、ビジョンと戦略の不足です。
経済産業省が公開している DXレポートによると、日本企業は、経営者から「AIを使って何かできないか」というあいまいな指示が出されるケースが多いとの指摘がありました。その結果、新しい取り組みが成されるものの、結果としてビジネスの改革に繋がらないケースが多発したといいます。
DXで何を成し遂げたいのか、どのように推進していくのかなどの明確なビジョンがないと、良い結果は得られません。経営層がIT技術やDXに十分な知識・関心を持ち、明確なビジョンを持ちながらDX推進への積極的な姿勢を見せることが、DX成功の近道です。
予算確保のために、投資対効果を明確にして経営陣を説得し、補助金や助成金の活用も検討しましょう。
現場の課題
現場部門は、DX推進の担い手です。何のためにDXを推進するのか、自分たちのどのようなメリットがあるのか、現場レベルで理解が不足しているとDXは浸透しません。慣れた業務フローを変えることに負担・抵抗を感じる人もいます。日常業務に追われているため、そもそも、DX推進のための時間や労力を割けないこともあるでしょう。
解決策としては、現場の理解を得るための研修や説明会を開催する、デジタルスキル・ツールの習得を支援する、業務フローを見直してDX推進のための時間を確保する、などが考えられます。
現場の意見を取り入れて、現場主導のDX推進を図ることも大切です。当事者意識を育てることで、積極的な行動が期待できます。
DXを推進する手順8ステップ
DXを成功に導くためには、段階的な取り組みと関係者全体の理解・協力が不可欠です。以下では、8つのステップに分けて、DX推進の手順をわかりやすく解説します。
STEP1. DXの目的を明確にする
DX推進を始める前に、まず「なぜDXを推進するのか」という目的を明確にします。単に流行だからという理由で推進しても、成功は難しいでしょう。具体的な目標と指標を設定し、新たなデジタル技術を活用してどのようにビジネスを変革していきたいのか、経営戦略を立ててください。
具体的には、以下のような点を明確にする必要があります。
- DXによってどのような課題を解決したいのか
- DXによってどのような目標を達成したいのか
- DXによってどのような未来を実現したいのか
「DXで効率化をしたい」といった目先の内容を目的・ビジョンに設定すると、単にIT技術を取り入れるだけで終わってしまいます。「DXを推進することでどのような企業を目指したいのか」「将来的にどうなりたいのか」といった広い視野を持つことが大切です。
STEP2. 目的を共有・周知する
スムーズにDXを推進するためには、経営層から現場まで、関係者全員がDXの目的を理解する必要があります。そのためには、経営層によるビジョンの提示、研修や説明会の実施、社内報やイントラネットでの情報発信など、様々な方法を駆使して、DXの目的を周知徹底することが大切です。
目的を共有・周知するための方法としては、以下のようなものがあります。
- 経営層による全社向け説明会
- 各部署向けの説明会
- 社内報やイントラネットでの情報発信
- 個別面談
STEP3. 現在の課題を整理する
現状の課題を把握することで、「DXによってどのような改善を図る必要があるのか」を明確にできます。業務フローの分析、アンケートの実施、インタビューなどを行い、組織全体の課題を把握しましょう。
課題を整理する際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 業務プロセスにおける課題
- システムにおける課題
- 人材における課題
- 組織体制における課題
- 文化風土における課題
STEP4. DX推進の優先順位を付ける
すべての課題を同時に解決しようとすると、混乱が生じます。整理した課題の中から、解決すべき課題を優先順位付けすることが重要です。
優先順位を付ける際には、解決することで得られる効果、実現可能性、緊急性などを考慮します。
- 課題の重要度
- 課題解決の難易度
- 課題解決による効果
- 必要な予算・時間
STEP5. 社内体制を構築する
DXを推進するためには、どのような社内体制が必要かを検討し、専用の部署やチームの設置、責任者の任命などを行いましょう。意思決定を迅速に行うために、必要な権限を与えることも大切です。
- DX推進の規模
- 必要な専門知識・スキル
- 予算
STEP6. DX人材の確保・育成
DX推進には、デジタル技術に関する知識やスキルを持った人材が欠かせません。社内に人材がいない場合は、新しい人材を採用するか、社内で育成するか、どちらかの手段を検討して実施する必要があります。
STEP7. 専門チームを編成
DX推進のための専門チームを編成したり、必要に応じて、特定の分野に特化した専門チームを編成することも有効です。マーケティングDX、顧客サービスDX、業務効率化DXなどの専門チームを編成することで、効率的にDXを推進できます。
専門チームを編成する際には、以下の点を考慮します。
- チームの目的
- 必要な専門知識・スキル
- チームメンバー
STEP8. DX推進に向けた雰囲気・文化作り
DX推進は、単なる技術導入ではなく、組織全体の文化変革です。社内に、DX推進に対する理解と協力を醸成し、DX推進に向けた雰囲気・文化作りを行いましょう。具体的には、経営層によるリーダーシップ、積極的な情報発信、社員同士の交流促進などが有効です。
- 経営層による積極的なコミットメント
- 失敗を恐れずにチャレンジできる環境作り
- 従業員の主体的な学びを支援する
上記の手順はあくまでも基本的な指針であり、具体的な内容は組織の状況や目的に合わせて調整する必要があります。DX推進は長期的な取り組みであり、継続的に改善していくことが重要です。
DX推進で良くある失敗
DX推進は、企業にとって大きなチャンスであると同時に、多くの課題を伴う作業でもあります。課題を最小限にしたいなら、失敗しやすいポイントを事前に把握して、対策を取ることが大切です。DX推進でよくある失敗例と、その対策について解説します。
DXを目的としている
「DXを推進するぞ!」と意欲的に取り組んでも、具体的な目標や方向性がなければ、ただ新しいツールを導入するだけの「デジタル化」になってしまいます。
DXは、新しい技術を取り入れることではありません。業務プロセスの改善や新しいビジネスモデルの創出など、具体的な目標を達成するための「手段」です。「DXを推進する」という目的を掲げると、手段と目的が逆転して上手く機能しない可能性があるため注意しましょう。
戦略を策定するのと同様に、DXを推進する場合も目的・ゴールを設定し、具体的な計画を立て、定期的に進捗状況をモニターして計画を修正する、という一連の作業が求められます。DX推進は特別なものではなく、ビジネス戦略のひとつと捉えるのが良いでしょう。
改善を行わない
DXで失敗した企業の中には、導入後の運用フェーズで改善活動が停滞してしまい「効果が得られなかった」「導入するだけで終わってしまった」というケースが多く見られます。
DXを推進するためには、継続的な改善が必要です。運用状況を常に監視し、必要に応じて改善していきましょう。
- 定期的にシステムやツールのレビューを行い、改善点を洗い出す
- 現場の意見を積極的に取り入れ、システムやツールの改善に活かす
- 従業員向けの研修やトレーニングを実施し、システムやツールの使い方を習得させる
また、運用の負担を最小限にするためにも、初心者であれば初心者向けツールを探すなど、自社のITリテラシーに合ったものを選んでください。
現場の意見を取り入れずに一方的にシステムを導入してしまうと抵抗感が生まれ、活用効率が低下する場合があるため注意が必要です。PDCAを回すスムーズな運用を目指すなら、現場の声を聞きながらDXに取り組むことをおすすめします。
DXの事例4選
DXを推進し、成果を出している企業の事例を4つご紹介します。
キユーピー:AIで不良品を検知
キユーピー株式会社は、AIを活用した原料検査装置を導入し、製造ラインにおける不良品検知の精度を飛躍的に向上させました。
従来、キユーピーでは、目視による検査で不良品を除去していました。しかし、この方法では、人為的なミスや検査員の疲労による精度低下が課題でした。そこで、キユーピーは、AIを活用した画像解析技術を導入しました。
AIに良品のパターンを学習させることで、従来の検査方法では見逃していたような微細な不良品も検出できるようになりました。AIによる不良品検知システムの導入により、キユーピーは以下のような効果を実現しています。
- 不良品率の大幅な削減
- 検査精度の向上
- 検査コストの削減
- 人為的なミスの防止
- 検査員の負担軽減
アサヒグループ:DX人材の育成
アサヒグループホールディングス株式会社は、経済産業省と東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構が共同で選定する「DX注目企業2023」に選定された、優れたデジタル活用の実績を持つ企業です。同社は、DX推進の担い手となる人材育成に積極的に取り組んでいます。
2021年から全社を対象としたDX人材育成プログラムを開始し、これまでに約1万人の社員が受講しました。プログラムでは、デジタル技術の基礎知識から、データ分析やAI活用まで、幅広い内容を学べます。
同社のDX人材育成プログラムはまだ始まったばかりですが、データ分析を活用した新商品開発やAIによる業務効率化などの成果が現れています。
フェリシモ:DXによる業務効率化
フェリシモ株式会は、「ニッチではあるが確実にファン」である人に寄り添いながら商品やサービスを提案する「クラスター&トライブ戦略」を掲げ、マーケティングDXに取り組むことで、年間数千時間に及ぶ業務効率化を達成しました。
顧客の嗜好に寄り添う戦略は、購買データや行動データなど様々なデータを収集し、分析する必要があります。そこで、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのツールを活用して、商品開発、コンテンツやメールDMのパーソナライズ化を行いました。
この結果、売上が増加しただけでなく、2019年3月~2020年2月で属人的な業務時間を計3,300時間削減、2020年3月~2021年2月で計7,600時間削減と、業務プロセスの効率化を実現しています。
野村不動産ホールディングス:DXによる顧客体験の向上
野村不動産ホールディングスは、マンションの探し方についてオンラインで学んだり相談したりできる「プラウドオンラインサロン」を立ち上げ、マンション探しについて「匿名」で気軽に質問できるメタバース空間を設置しました。ユーザーはアバターとなり、事前予約不要・匿名で相談ができます。
また同社は、DXの一環で、接客に使う資料をクラウド上のプラットフォームに統一しています。この結果、物件資料の管理がしやすくなったほか、接客上のインターフェースが統一されて、ユーザーがストレスなく物件を検討できるようになりました。社員は資料の準備をする手間が減り、顧客対応により多くの時間を費やせるようにもなりました。こうした取り組みにより、顧客満足度が向上しました。
DXに役立つツール
DX推進において、多くの課題が立ちはだかります。限られた予算や人手で、効果的にDXを実現するには、適切なツールを活用することが重要です。
MA
MA(マーケティングオートメーション)は、メール配信やWebサイト分析、リード管理などのマーケティング活動を自動化するツールです。
顧客とのコミュニケーションを効率化することで、マーケティング担当者の負担を軽減し、より戦略的な業務に集中できるようになります。MAツールの主な機能は以下の通りです。
- メール配信: 顧客一人ひとりに最適なタイミングで、最適な内容のメールを自動配信
- Webサイト分析: 顧客の行動を分析し、効果的なマーケティング施策を立案
- リード管理: 獲得したリードを効率的に管理し、育成
- 顧客管理: 顧客情報を一元管理し、顧客との関係構築を促進
DXに取り組み始めたばかりでも挫折しない!シンプルで使いやすいMA『BowNow』
MAツールは開発会社によって機能が異なります。機能が多ければできる施策は増えますが、覚えることが増えたり操作が難しくなったりして、挫折する可能性が高まります。自社の目的や、ITリテラシーに合わせたツール選びが大切です。ITツールに慣れていない人や、これからDXに取り組みたいという人でも扱いやすいMAツールは「BowNow」です。
「BowNow」は14,000社以上が導入している国内シェアNo.1※のMAツールです。完全無料のフリープランがあるため、とりあえずMAツールを触ってみたいという人にも最適です。運用をしてみて、必要な機能があれば都度課金して追加していくシステムなので、最低限のコストで運用できます。
無料プランでも、定期開催しているウェブ配信の勉強会に参加でき、MA操作の基礎からマーケティング全般の知識まで体系的に学べる動画が閲覧できます。有料プランを契約すると、専任担当がついて、1to1サポート、技術支援などを行います。
※出典:株式会社DataSign「DataSign Webサービス調査レポート 2024.4」
詳しくはこちら:MAツール『BowNow』とは
SFA/CRM
SFA(営業支援システム)とCRM(顧客関係管理システム)は、営業活動や顧客管理を支援するツールです。顧客との関係を可視化することで、営業活動の効率化や売上アップに貢献します。
SFAは営業活動の管理を効率化し、CRMは顧客情報を一元化して、パーソナライズされたサービス提供を可能にします。
CMS
CMS(コンテンツ管理システム)は、Webサイトやブログのコンテンツを簡単に作成・編集・公開できるシステムです。従来のようにHTMLやCSSなどの専門知識がなくても、直感的な操作でコンテンツを作成できるため、作業時間を大幅に短縮できます。
BI
BI(ビジネス・インテリジェンス)とは、企業が持つ膨大なデータを収集・分析し、経営戦略の意思決定をサポートするためのツールです。複雑なデータを分析してわかりやすく可視化することで、迅速かつ的確な意思決定を行えるように支援します。顧客データを分析して顧客ニーズを深く理解できれば、満足度向上につながる商品開発やサービス提供も可能です。
まとめ
DXは今後、企業が生き残るための必須の取り組みです。2025年という崖が近づいている今、なるべく対策を取る必要があります。課題に直面したら、本記事の内容を参考に、より良い対策を検討してください。DXで成功している他社企業の事例を真似るのもおすすめです。
営業生産性を上げる“攻め”のDXとは
近年、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが進み、その対応が急がれています。本書では、セールス&マーケティング領域で必要なDXと実現のためのおすすめステップについて解説しています。
監修者
クラウドサーカス株式会社 石本祥子
新卒でコンサルティング会社に営業職として入社。3年で営業所長代理を経験後、ベンチャー企業を経て、クラウドサーカス社にマーケティング職として入社。
営業とマーケティング、いずれの経験もあることを活かし、クラウドサーカス社が提供しているMAツール『BowNow』において、マーケティングと営業に関するメディアの監修を含む、Webマーケティングの全域を担当している。