LTV(顧客生涯価値)とは?計算方法や向上させるための施策を解説
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LTV(顧客生涯価値)とは、取引を開始してから終了するまでの期間に、顧客が企業にもたらす利益の総額を指します。この指標は、顧客一人ひとりの価値を数値化することで、マーケティング戦略や経営判断の精度を高めるために活用されます。特に、サブスクリプションモデルやリピート購入が重要な現代のビジネスにおいて、LTVの向上は収益の安定化とビジネスの成長に直結しています。
本記事では、LTVの基本的な概念から計算方法、さらにLTVを高めるための具体的な施策までを詳しく解説します。
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LTV(顧客生涯価値)とは?
LTV(顧客生涯価値)とは、企業と取引を開始してから終了するまでの間に、顧客が企業にもたらす総利益を指します。顧客一人ひとりの価値を数値化したLTVは、マーケティング戦略や経営判断の重要な基準として活用されます。
基本的に平均購買単価、購買頻度、継続期間、利益率などの要素を組み合わせて算出されます。LTVの仕組みを理解した上で向上させるための施策を実施することで、長期的な収益の最大化が期待でき、最終的にはビジネスの成長や経営の安定につながります。
LTV(顧客生涯価値)が注目されている背景
近年、業界を問わずLTV(顧客生涯価値)の注目度は高まっています。その背景について、主な4つの要因を解説します。
サブスクリプションサービスの普及
近年、LTVが注目される背景には、サブスクリプションサービスの普及があります。定額制のサービスモデルでは、顧客が継続的にサービスを利用することが前提となるため、一人の顧客から得られる長期的な価値、すなわちLTVの最大化が必要となります。また、LTVはサブスクリプションサービス制のサービスの成果を図る指標としても、特に重要視されています。
新規リード獲得が難しくなっている
新規リードの獲得が難しくなっている現状も、LTVが注目される要因の一つです。市場の成熟や少子高齢化、グローバル化など、様々な要因によって競争が激化し、新規リードを獲得するのが困難になっています。そのため、効率的な収益向上策として、新規顧客を開拓するのではなく、既存顧客との関係を深めることでLTVを向上させる施策が注目されているのです。
顧客ロイヤリティー向上の指標として活用されている
顧客ロイヤリティーとは、顧客が特定の企業やブランドに対して抱く信頼や愛着の度合いを指します。近年、企業は顧客ロイヤリティーの向上に注力しており、LTVは顧客ロイヤリティーの強さを測る指標の一つとして注目を集めています。顧客ロイヤリティーが向上することで、継続的な購買やサービス利用が期待でき、結果としてLTVの向上につながります。逆にいうと、LTVを高める施策を実施することで、ロイヤルカスタマーが増えて既存顧客を維持しやすくなるのです。
One to Oneマーケティングの必要性が高まっている
LTVが注目されている背景には、One to Oneマーケティングの普及もあります。One to Oneマーケティングとは、個々の顧客のニーズや嗜好に合わせて、個別に最適化されたアプローチを行う手法です。個別のコミュニケーションを通じて関係性を深めることを目的としており、顧客の満足度やロイヤルティーが向上し、継続的な購買やサービス利用を促進する効果があります。
LTVは、こうした顧客との長期的な関係性から得られる総利益を測定する指標であり、One to Oneマーケティングの効果を評価する上で重要な役割を果たします。したがって、顧客ロイヤルティーを高めるための戦略が重視される中、LTVの概念がますます重要視されるようになりました。One to Oneマーケティングに関して、下記の関連記事で詳しく解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
新規顧客獲得と既存顧客維持のコスト比較「1:5の法則」
「1:5の法則」とは、新規顧客の獲得には既存顧客の維持に比べて5倍のコストがかかるというマーケティングの法則です。 既存顧客はすでに商品やサービスを理解しているため、再購入や追加購入の可能性が高く、少ないコストで収益を上げることが可能です。一方、新規顧客の獲得には、広告や営業活動など多大な労力と費用が必要となります。そのため、既存顧客の維持や関係強化に注力し、LTV(顧客生涯価値)を向上させることは、コスト効率の面でも有効な戦略といえます。
これらの背景から、顧客との関係を強化し、ひとりひとりの顧客から獲得できる利益を最大化する戦略は、企業の持続的な成長への効果が大きいため、LTVは近年より一層注目されるようになったのです。
LTVの計算方法
LTVの計算方法はケースによって少し異なりますが、以下では代表的な3種類の計算方法を紹介します。
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基本的な計算方法
LTVの基本的な計算方法は、「平均購買単価 × 購買頻度 (回/年)× 継続期間(年)」です。たとえば、平均購買単価が5,000円、年間の購買頻度が12回、継続期間が2年の場合、LTVは以下のように計算されます。
5000円×12回× 2年=120,000 LTV=120,000円
この計算により、1人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす価値を定量的に把握できます。ただし、実際のビジネスでは、顧客獲得コストや維持コスト、利益率なども考慮する必要があります。そのため、LTVを算出する際には、これらの要素を含めた詳細な計算が求められる場合があります。
製品の利益率を考慮するケース
製品の利益率を考慮するケースでは、LTVの計算に利益率を掛け合わせます。たとえば、平均購買単価が15,000円、利益率が30%、年間購買頻度が4回、継続期間が4年の場合、LTVは15,000円 × 0.3 × 4回 × 4年 = 72,000円となります。この計算方法では、実際の利益ベースでの顧客価値を評価できるのが特徴です。
顧客の獲得・維持に伴うコストを考慮するケース
顧客の獲得・維持に伴うコストを考慮する場合、LTVの計算式は「(平均購買単価 × 利益率 × 購買頻度 × 継続期間) - (顧客獲得コスト + 顧客維持コスト)」となります。例えば、上記の例で顧客獲得コストが10,000円、顧客維持コストが2,000円の場合、LTVは72,000円 - (10,000円 + 2,000円) = 60,000円となります。これにより、実際の利益をより正確に把握できます。
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LTVと併せて覚えておくべき用語7選
LTVと併せて覚えておくべき用語として、以下の7つがあります。
ARPA
ARPA(Average Revenue Per Account)とは、1アカウントあたりの平均収益を示す指標です。計算式は「総売上高 ÷ アカウント総数」で、特にBtoBビジネスで用いられます。この指標は、特に法人向けサービスや複数ユーザーが利用するアカウントベースのビジネスモデルにおいて、収益性の分析に役立ちます。LTVの算出において、顧客単価の把握に貢献します。
ARPU
ARPU(Average Revenue Per User)は、1ユーザーあたりの平均収益を示す指標で、「総売上高 ÷ ユーザー総数」で計算されます。先述した「ARPA」と混同されやすいので、しっかりと区別しておきましょう。
通信業界やサブスクリプションサービスなど、主に個人ユーザー向けのサービスや製品に適用され、ユーザー単位での収益性を評価する際に用いられます。ARPAと同様に、LTVの計算において顧客単価の理解を深めるために重要な指標です。
CAC
CAC(Customer Acquisition Cost)は、顧客獲得単価を指し、新規顧客を獲得するために要したコストの平均値を示します。計算式は「マーケティングおよび営業活動にかかる総費用 ÷ 新規顧客数」です。LTVとCACのバランスを分析することで、投資対効果を評価し、効率的なマーケティング戦略の立案が可能になります。
MQL
MQL(Marketing Qualified Lead)は、マーケティング活動によって獲得された見込み顧客のうち、購買意欲が高く、営業部門に引き渡す準備が整ったリードを指します。適切にMQLを定義し、管理することは、効果的なリードナーチャリングとLTVの向上につながります。
SQL
SQL(Sales Qualified Lead)は、営業部門がアプローチする準備が整った見込み顧客を指します。MQLからさらに精査され、具体的な購買意欲やニーズが確認されたリードです。SQLの質を高めることで、成約率の向上やLTVの増加が期待できます。
チャーンレート
チャーンレートは、一定期間内にサービスを解約または離脱した顧客の割合を示す指標です。計算式は「解約顧客数 ÷ 総顧客数」で求められます。チャーンレートの低下は、顧客の継続利用期間の延長につながるため、結果的にLTVの向上に直結します。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスは、ビジネスモデルの持続可能性を評価するために、顧客一人当たりの収益性を分析する指標です。サブスクリプションサービスで利用されるケースが多く、具体的には、「LTV ÷ CAC」で計算できます。
一般的にこの値が1以上であれば、収益性があると判断され、3以上であれば、サブスクリプション事業が健全な状態であると判断されます。ユニットエコノミクスの分析によってLTVとCACのバランスを最適化し、安定した事業運営に役立てられます。
LTV(顧客生涯価値)向上のための4つの施策
LTV(顧客生涯価値)を向上させるためには、以下の4つの施策が効果的です。
購入単価を上げる
顧客一人当たりの購入金額を増やすことで、LTVは向上します。具体的には、関連商品を組み合わせたセット販売や、上位モデルへのアップセル、購入時のクロスセルなどの戦略が有効です。
また、メールの開封率やクリック状況、アクセス履歴を分析し、適切なタイミングでアプローチすることで、購買意欲を刺激し、購入単価が上がる可能性があります。顧客の満足度を高められるように工夫した上で、売上の増加を図りましょう。
購入頻度を高める
LTVを高めるためには、顧客の購買頻度を増やすための施策も必要です。定期的なメールマガジンやプッシュ通知を活用し、新商品の案内やセール情報を提供することで、再購入を促進します。
また、ポイント制度やリピート購入特典を導入することで、顧客の購買意欲を刺激することも可能です。パーソナライズ化されたアプローチを行い、購買へのきっかけを作り出しましょう。
コストを減らす
顧客獲得や維持にかかるコストを削減することも、LTV向上につながります。効率的なマーケティング手法を採用し、広告費用対効果を高めることで、無駄な支出を抑えましょう。
また、CRMやSFA、MAツールなどを活用して既存顧客のデータを分析し、効果的なターゲティングを行うことでリソースの最適化を実現し、顧客維持コストの削減につながります。さらに、利益ベースで数値管理ができている場合は、商品の原価率を抑えるのも一つの手です。
解約率を下げる
顧客満足度を高め、解約のリスクを低減することも、LTVを維持・向上できる方法の一つです。長期利用ユーザーを優遇するサービスをはじめ、ポイントカードの導入や定期的なフォローアップ、カスタマーサポートの充実などが効果的です。
さらに、顧客からのフィードバックを収集し、サービスや商品の改善に活かすことも大切です。顧客の意見を尊重し、真摯に向き合う姿勢を見せることで信頼度は向上し、長期的な関係構築が可能となります。
まとめ
本記事では、LTVの基本的な概念から計算方法、さらにLTVを高めるための具体的な施策までを詳しく解説しました。
LTV(顧客生涯価値)は、企業の長期的な収益性を評価する上で重要な指標です。基本的な計算方法を理解し、購入単価や頻度の向上、コスト削減、解約率の低下といった施策を組み合わせることで、効果的にLTVを高めることが可能です。本記事を参考にLTVを向上させ、持続的なビジネスの成長を実現しましょう。
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クラウドサーカス株式会社 石本祥子
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新卒でコンサルティング会社に営業職として入社。3年で営業所長代理を経験後、ベンチャー企業を経て、クラウドサーカス社にマーケティング職として入社。
営業とマーケティング、いずれの経験もあることを活かし、クラウドサーカス社が提供しているMAツール『BowNow』において、マーケティングと営業に関するメディアの監修を含む、Webマーケティングの全域を担当している。