ペルソナマーケティングとは?特典ワークシート付!メリットや設定方法解説
マーケティングにおける「ペルソナ」とは、商品やサービスを利用する「架空のユーザー像」を示す言葉です。ペルソナを設定し、施策を最適化するマーケティング手法を「ペルソナマーケティング」といいます。
ペルソナマーケティングを実施することで、顧客のニーズを的確に把握できるだけでなく、顧客の立場に立って自社商材や施策の評価を行えるため、より訴求力の高い戦略・施策を打ち出すことができます。マーケティングや営業の方向性の統一にもつながるので、より円滑且つ効率的に業務を進められます。
本記事では、ペルソナマーケティングの基礎知識やメリット、設定方法やその際のポイントなどを解説します。最後には実際の成功事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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ペルソナの基本や作成方法の解説はもちろん、そのままペルソナを簡単に作成できるワークシート(記入例付き)までご利用いただける特典です。
目次
ペルソナマーケティングとは
本章では、ペルソナマーケティングの概要や具体例について解説します。
そもそもペルソナとは
ビジネスやマーケティングで使用される「ペルソナ」とは、商品やサービスを利用する「架空のユーザー像」を示す言葉です。「ペルソナを設定する」というと、年齢、性別、職業、年収、家族構成、趣味、性格などを詳細に仮定して、ひとりのリアルな人物像を作り上げます。
もともとペルソナ(Persona)は「劇などの登場人物」や「仮面」という意味で、心理学の領域で使われていましたが、現在ではビジネスにおいて一般的なマーケティング用語として定着しています。ペルソナを活用したマーケティング活動を「ペルソナマーケティング」といい、ユーザーに対する理解を深め、適切なアプローチを行うのに役立つため、多くの企業で取り入れられています。
ちなみに、ペルソナはビジネスではマーケティング以外にもHR領域でも活用されます。その場合は「採用すべき人物像」を意味し、より明確化するために用いられます。
ペルソナ設定の具体例
以下の図は具体的なペルソナ設定の一例です。属性に加えてさらに詳細な情報を絞り込んでいき、具体的な一人の人物像を作り上げます。
ペルソナと混同されやすいものに「ターゲット」があります。両者の違いについて、次章で解説します。
ペルソナとターゲットの違い
ペルソナとターゲットの違いは、「人物像に対する解像度の高さ」にあります。ペルソナはひとりの人物が明確にイメージできるほど細かく人物像を設定するのに対し、ターゲットは「30代・女性・主婦」「20代・男性・ビジネスマン」といった属性を中心に、人物像をざっくりと表現します。
以下はそれぞれの違いをまとめた表と、それぞれの具体例です。
▼ペルソナとターゲットの違い
ペルソナ | ターゲット | |
---|---|---|
設定範囲 | 職業・家族構成・思考など、属性を元に詳細を設定した人物像 | 年代・性別・居住地域などの属性やセグメンテーション |
情報の特性 | 定量的(数値・数量で表せる)データ+定性的(数値化できない)データ | 定量的データのみ |
具体性 | 高め | やや低め |
活用例 | ・カスタマージャーニー作成 ・コンテンツ設計 |
・メルマガ送付リストの絞り込み条件設定 ・広告出稿の属性設定 |
ペルソナマーケティングの重要性
なぜペルソナマーケティングは重要視されているのでしょうか?
ペルソナを活用したマーケティングの実施は、「対象とする顧客に対する深い理解」と「関係者間での認識の統一」という2つの点から、非常に重要視されています。
マーケティングにおいて最も重要なのは、自社商材を利用する顧客のニーズや関心を的確に把握し、最適なアプローチを行うことです。そのためには、顧客に対する深い理解が必要であり、顧客の解像度を上げられるペルソナの設定が役立ちます。具体的には、適切なチャネルでの商材流通や、訴求力の高い広告出稿などを実現できます。
また、ターゲット設定だけだと関係者間での認識にズレが生じる場合がありますが、ペルソナを設定することで認識や方向性を統一でき、ズレを最小限に抑えられます。そのため、より効率的に施策を実施することが可能です。
ペルソナマーケティングのメリット
ペルソナマーケティングを実施するメリットは主に以下の4つがあります。それぞれのメリットを詳しく解説します。
- 顧客のニーズを的確に把握できる
- 関係者間で意識・イメージを統一できる
- マーケティング戦略の方向性が定まる
- 時間・コストの削減
顧客のニーズを的確に把握できる
ペルソナマーケティングの最も大きなメリットは、顧客のニーズを的確に把握できる点にあります。
具体的な人物像のニーズを満たす商材や施策を考えることは、ペルソナと共通点があるリアルのユーザーに対して、最適な商品やサービス、情報を提供することにつながります。商材そのものを企画・設計するときだけでなく、流通や広告、キャッチコピーなど、マーケティング戦略におけるあらゆる項目を検討する際にも重要な役割を果たします。
顧客の目線に立った商品開発やマーケティング・営業戦略は、最終的に企業の売上向上や発展にもつながるため、とても大切です。
関係者間で意識・イメージを統一できる
商品やサービスを開発・販売していくにはマーケティング担当、企画担当、営業など多種多様な人間が関わります。ペルソナを設定することで、立場が違っても「どんな顧客向けのサービスなのか」という共通認識・イメージを持って業務を進められます。
逆にペルソナを設定しないと、言葉にしきれない意図が伝えられず、認識にズレが生じる可能性があります。最終的には思ったような成果が得られなかったり、作業が非効率になってしまったりする恐れもあります。
意識やイメージを統一することで、顧客像にばらつきが生じず、アイデアや企画を立案する際に視点がぶれにくくなります。認識のすり合わせに時間を使う必要がないため、プロジェクトを効率よく進められることもメリットです。
マーケティング戦略・施策の方向性が定まる
ペルソナを設定してマーケティングを実施することで、マーケティング戦略や施策の方向性を定めやすいというメリットもあります。
ペルソナのニーズを的確に把握することで、「この商品やサービスをどのような時に必要か」「どのような課題を解消したいか」「既存のサービスの改善点はどこか」などを明らかにしやすくなります。そのうえで、ペルソナが自社の商材を利用する際、何があれば喜ぶかを想像し、周りの人にどのように説明するかを考えます。
説明できるということは、自社の商品・サービスの強みや、競合他社との差異を明確に把握できているということです。この強みや差異ポイントを元にして戦略や施策を練ることで、適切に方向性を定めることができます。
時間・コストの削減
時間やコストの削減につながるという点も、ペルソナマーケティングの大きなメリットです。ペルソナがあれば、顧客像について早い段階で認識を合わせることができるため、マーケティング戦略・施策の立案や、成果につなげるまでの時間やコストを節約できます。認識のズレも生じにくくなるため、戦略・立案の修正や出し直しの回数も減り、生産性向上も見込めます。
戦略が最適化されないまま進行し、膨大な広告予算をかけたにも関わらず期待していた成果が出ないというケースも避けられるので、大幅なコスト削減になり、最終的には企業の利益アップにもつながります。
ペルソナの設定方法
ペルソナを設定する具体的な方法を紹介します。ペルソナの設定では「必要な情報を集める」「リアルな人間に仕上げる」という2つのステップが重要です。
それぞれのステップについて、詳しくみていきましょう。
STEP1. 必要な情報を集める
ペルソナ設定の際に必要な情報は、「自社の商材に関する情報」「顧客の情報」の2つです。「自社の商材に関する情報」を集めるには、自社の強みや市場における優位性、競合他社との差別ポイントを明らかにするために、「3C分析」といった分析を行うのも一つの方法です。
ただ、それだけでは顧客を解像度高く理解することはできません。顧客へのアンケートまたはインタビューなどを実施し、自社商品の感想や購入プロセスを、顧客に直接ヒアリングする定性調査の併用をおすすめします。具体的には以下の情報を収集しましょう。
▼自社の商材に関する情報
- 商品に興味をもった理由
- 購入までの行動
- 検索キーワード
- 購入を決定した理由
- 今後期待すること
よりリアルな人物像に仕上げるために、その人について詳しく連想できる仕事やプライベートに関する情報も、収集してみましょう。
▼仕事
- どのような仕事についているのか、役職
- 1日の過ごし方
- 会社の規模
- 業界の特徴
- 仕事への不満、期待
- 課題やチャレンジしたいこと など
▼プライベート
- 家族構成
- 学歴、年齢、収入
- 趣味
- 情報の入手方法、よく利用するデバイス
また、自社で運営するWebサイトがある場合は、アクセス解析を通して、より定量的に自社の情報を集めることができます。SNSにおけるユーザー間のコミュニケーションから生の声を把握したりして、インサイト分析を行うことも効果的です。具体的には以下の情報を収集します。
▼自社サイトに関する情報
- 流入経路
- 訪問したページ
- インサイト分析の情報
- 購買データ
STEP2. ペルソナを設定する
情報を収集したら、共通する情報を抽出してリアルな人間像を設定していきます。プロフィールや履歴書を作るイメージで進めると作りやすいです。下記は主な項目です。
- 基本データ:年齢、性別、居住地、職歴、学歴、家族構成など
- 仕事について:職種、役職、年収、業界・業種、仕事の悩みなど
- 利用する情報源について:SNS、ブログ、新聞、雑誌、テレビなど
- 行動特性:ライフスタイルなど
- 心理特性:価値観、趣味嗜好、性格など
上記の要素を羅列するだけではなく、人間としてのリアルさを出すための背景やストーリーを設定することが大切です。「過去の経験から現在このような行動をする」といった、人間的な奥行きを作りましょう。
イメージ写真を作成したり、具体的な暮らしぶりや仕事ぶりをイメージしたりすると、より人物像を明確に想像しやすくなるのでおすすめです。
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ペルソナをカスタマージャーニーに落とし込もう
ペルソナマーケティングを効果的に実施するには、ペルソナを設定後、カスタマージャーニーマップを作成し、落とし込むことが大切です。以下で詳しく解説します。
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客を自社の優良顧客へ醸成するための設計図です。顧客が商品やサービスと出会ってから購入、利用、さらには継続・再購入に至るまでの道のりを、旅に例えています。
具体的には、顧客の状況を以下の5つのフェーズに分類し、「顧客が何を考えているのか」「いつどのような行動をとるのか」といった顧客の心理や行動を言語化します。
- 認知:顧客が商品やサービスの存在を知るフェーズ
- 検討:商品やサービスについて詳しく情報収集し、比較検討するフェーズ
- 購入:実際に商品やサービスを購入するフェーズ
- 利用:商品やサービスを使い始めるフェーズ
- 継続・再購入:商品やサービスを使い続け、あるいはリピート購入するフェーズ
さらに、この分類を可視化した図を「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。顧客の検討フェーズを的確に把握することができるうえ、適切な施策の立案に役立ち、マーケティング活動をより効果的に実践できるようになります。以下は、カスタマージャーニーマップの例です。
ペルソナ・カスタマージャーニーマップをもとに施策を検討する
ペルソナとカスタマージャーニーマップは、どちらか片方だけでなく、セットで活用することでより効果的に運用できます。
具体的には、カスタマージャーニーマップをもとに、ペルソナで設定した人物像に対するプロモーションや施策内容を考えていきます。明確化した顧客の購買心理・行動の一連に沿って、「どのタイミングで、どのような接触を試みるのがベストなのか?」を検討しながら施策を練ることが大切です。
適切にペルソナを設定するポイント
ペルソナを設定すると多くのメリットが得られますが、逆に適切なペルソナを設定できなければ、逆効果となる可能性もあります。本章では、適切なペルソナを設定するために大切なポイントについて解説します。
新規顧客の立場で考える
新規・既存に関わらず、ユーザー目線に立ってペルソナ設定を行うことが大前提ですが、特に新規顧客の立場に立って、フラットな視点で考えることがポイントです。
既存顧客の立場だけでペルソナを設定してしまうと、既存顧客の囲い込み効果はあっても、新規顧客開拓への有効性は下がってしまい、自社の発展に支障をきたす可能性があります。
またフラットな視点を持たず、初めから自社サービスの優位性を元にして人物像を構築してしまうと、リアルな人物とはかけ離れたペルソナの設定につながり、効果的なマーケティングを実施するのが難しくなるでしょう。
インタビューやアンケートを通した既存顧客からの意見を大切にしつつ、既存顧客の持つ特性だけに影響されないよう、注意しながらペルソナを設定することが重要です。
リサーチを元に合理的な根拠を持つ
高い精度でペルソナを設定するためには、リサーチをもとにした合理的な根拠を持つことが大切です。
根拠のない仮定を重ねてしまうと、現実とかけ離れた人物像が出来上がり、ペルソナ設定の意味がなくなってしまいます。ペルソナの設定方法で述べたインタビューやアンケート、公表されている統計データや競合他社が公開しているアンケート調査など、根拠を持って人物像を構築していくことで、精度の高いペルソナを設定することができます。
関係者全員で認識をすり合わせる
関係者全員でペルソナ設定に関する認識をすり合わせ、共通の意識を持つことは特に重要です。人物像を構築する際には、少人数で作業をせず、できる限り関係するメンバー全員で一緒に作ることをおすすめします。特に複数部門にまたがって関係者がいる場合、各部門の業務内容によって、人物像に大きく違いがあるケースがあります。
リサーチしたデータを元に議論を重ね、最終的にどのような人物像を設定するのか、細部まで認識をすり合わせておきましょう。この作業を疎かにすると認識にズレが生じる可能性が高まり、生産性の低下や無駄な支出などにつながるため、丁寧に取り組むことが大切です。
ペルソナ設定後も定期的に見直す
ペルソナは設定して終わりではなく、定期的に見直し、適宜修正することが大切です。 時間が経ち、世情や環境が変化するにつれて、最初に設定したペルソナが適切でなくなることがあります。定期的且つ継続的にペルソナを見直すことで、より効果の高いマーケティング活動を実施することができます。
特にマーケティング戦略において、自社商材のターゲットに変化が生じた場合や、新商品・サービスを展開する場合、市場における企業層の立ち位置が変わる場合などは、必ず見直しと修正を行いましょう。
ペルソナマーケティングの成功事例2選
本章では、実際のペルソナマーケティングの事例について紹介します。自社に照らし合わせて参考にしてください。
アサヒビール
大手飲料会社のアサヒビールでは、2009年3月から発売した発泡酒「アサヒ クールドラフト」がヒットし、競合他社の発泡酒の売上が落ち込む中でも、比較的売上減を抑えることに成功しています。背景には、緻密なペルソナマーケティングが存在していました。
消費者2000人へのインタビュー調査を行い、ペルソナを消費者に感情移入するマーケティング方法として採用。具体的且つ詳細な人物像を構築することで、担当者の想像力を喚起することを狙ってペルソナを活用した商品開発を行いました。
具体的には定量的なデータ分析を行い、愛飲者のペルソナは「30代後半以上の男性」に設定。ある条件を満たすユーザー10名にインタビューを行い、その回答を定性的な情報として活用し、以下のようなペルソナを形成していきました。
- 年収900万円の44歳の自営業者で、家族は1歳下の妻と長男16歳、長女13歳の4人家族で都内在住
設定したペルソナは、商品名やパッケージ作りにも役立っています。同社の酒類本部・マーケティング本部・商品開発第一部 清水二郎エグゼクティブプロデューサーは、「急成長している市場向けの新商品にはペルソナは要らなかった。ファンが固定化された市場だからこそ有効だと思う」と語っています。綿密に設定されたペルソナによって成功したマーケティング事例の一つです。
カルビー
大手スナック菓子メーカーであるカルビー株式会社は、大ヒット商品である「ジャガビー」にてペルソナマーケティングを活用しています。
菓子メーカーでは顧客を明確にしたり、ターゲットを絞り込んだりせず、万人受けを狙う商品開発が一般的です。しかし、同商品ではスナック菓子から遠ざかるというデータがある「20〜30代の独身女性」を取り込み、万人受けする商品開発に挑みました。
定量データだけでなく、対象によく読まれている雑誌などからライフスタイルを推論し、ミーティングから得た情報で人物像を構築していきました。「27歳独身女性、文京区在住、ヨガと水泳に凝っている…」と具体的に設定し、人物像に近いタレントの写真も用意することで、顧客像をより明確にイメージできるようにしました。
ペルソナを元に、同商品のパッケージデザインやWebサイト、広告を考え、コンビニでの販売を実施。来客数の8割が男性と言われる中でも、購買者の半数は女性であり、ターゲットとしていた女性顧客の獲得に成功しました。
まとめ
本記事では、ペルソナマーケティングの基礎知識やメリット、設定方法やその際のポイントなどについて、詳しく解説しました。
ペルソナマーケティングを実施することで、顧客の立場に立った戦略を打ち出せるため、成果の拡大が見込めるほか、チームで共通した認識や同じ方向性に進めるので、より効率的に業務を進められるというメリットがあります。
ただし、適切にペルソナを設定できなければ、効果が得られないだけでなく、無駄なコストの支出や生産性の低下にもつながりかねません。
激しい変化に対して柔軟に応じるためにも、合理的な根拠を持ったペルソナ設定や、定期的な見直しの実施など、「適切にペルソナを設定するポイント」で述べたコツを意識して取り組んでみてください。
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監修者
クラウドサーカス株式会社 石本祥子
新卒でコンサルティング会社に営業職として入社。3年で営業所長代理を経験後、ベンチャー企業を経て、クラウドサーカス社にマーケティング職として入社。
営業とマーケティング、いずれの経験もあることを活かし、クラウドサーカス社が提供しているMAツール『BowNow』において、マーケティングと営業に関するメディアの監修を含む、Webマーケティングの全域を担当している。