DECAXとは?マーケティングにおける活用事例や、他の購買モデルとの違いをまとめて解説
DECAXは、電通によって2015年に提唱された、コンテンツマーケティングに対応した消費者の購買行動モデルです。
インターネットやSNSが登場し、消費者行動が多様化する現代において、必要不可欠なフレームワークとして多くの企業で活用されています。消費者の購買行動を促進するための戦略策定において、重要な役割を担っています。
本記事ではDECAXの基礎知識をはじめ、各要素の解説や、他の購買行動モデルとの違いなどについて解説します。最終章では実際の活用事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
DECAXとは
DECAXの概要と、DECAXが登場した背景を解説します。
購買行動モデル「DECAX」
DECAX(デキャックス)は、コンテンツマーケティングに対応した消費者の購買行動モデルの一つです。Discovery(発見)、Engage(関係構築)、Check(確認)、Action(行動・購入)、Experience(体験)の5つの要素で構成されています。コンテンツマーケティングとは、ユーザーが有益と感じる情報(コンテンツ)を企業が発信して、購買行動を促すマーケティング活動のことです。企業が消費者との関係を築き、購買行動を促進するための戦略を策定する際にDECAXが役立ちます。
従来の購買行動モデルは企業視点に立ったものでしたが、DECAXは消費者視点に立ったフレームワークで、ユーザーが商品・サービスを見つけ、購入する過程だけではなく、その後の体験も含めた消費者の行動全体をカバーしている点が特徴です。企業は顧客のライフサイクルを包括的に理解し、長期的な関係構築や顧客満足度の向上を目指すことができます。コンテンツマーケティングに関して、詳しくは下記関連記事で紹介しています。
DECAXが登場した背景
DECAXが登場した背景には、消費者行動の多様化とデジタル技術の進化があります。インターネットやスマートフォンの普及により、消費者は商品・サービスの情報を自ら入手し、比較検討することができるようになりました。
従来の購買行動モデルだけでは消費者の複雑な意思決定プロセスを十分に把握できなくなり、この変化に対応するために登場したのが「DECAX」です。DECAXは、購入後の体験や口コミの影響も重視することで、企業がより効果的なマーケティング施策を展開できるように設計されています
このような背景から、DECAXモデルを活用することで消費者理解が深まり、ビジネスを成功させる上で必要不可欠なフレームワークとなっています。
DECAXの5つの要素
DECAXを構成する5つの要素「Discovery(発見)、Engage(関係構築)、Check(確認)、Action(行動・購入)、Experience(体験)」について、詳しく解説します。
Discovery:発見
「Discovery(発見)」は、消費者が初めて製品やブランドに気づく段階です。SNSやウェブ広告、口コミなどを通じて、消費者が商品やサービスの存在を知ることが多いです。
企業にとっては、ここでの露出を最大化することが重要であり、消費者の関心を引くための効果的なコンテンツやキャンペーンが求められます。企業は高品質なコンテンツを提供することで消費者にブランドに興味を持たせ、次のステップであるEngageに進んでもらう可能性が高まります。
Engage:関係構築
「Engage(関係構築)」では、消費者とブランドとの間に繋がりが形成され、関係性が構築されるフェーズです。消費者がブランドに対して関心を持ち、さらに深く関わろうとします。
企業は、消費者の欲しいコンテンツの提供を通して、消費者とのコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことが求められます。ソーシャルメディアでの双方向のコミュニケーションや、パーソナライズされたコンテンツの提供などが効果的です。消費者がブランドに親しみを感じることで、購買意欲がより一層高まります。
Check:確認
「Check(確認)」は、消費者が商品やサービスを購入する前に、詳細な情報を調べる段階です。このステップでは、口コミやレビュー、商品説明などが消費者の判断に大きな影響を与えます。
信頼性の高い情報提供や、ポジティブなレビューの獲得が企業にとって重要になります。消費者が購入前に疑問や不安を解消できるように、丁寧なサポートを提供すると良いでしょう。
Action:行動・購入
「Action(行動・購入)」は、前段階の「Check」で商品が自分に必要だと判断し、消費者が実際に商品・サービスを購入するフェーズです。購入手続きの簡便さや支払い方法の多様性、迅速な配送などの要素が消費者の行動を左右するため、企業は消費者がスムーズに購買行動を行えるような環境を整える必要があります。購入を促進するための割引やプロモーションの活用も効果的です。
この段階では、商品・サービスをカートに入れたり、商品を手に取ったりしただけでも「購入」とみなされます。
Experience:体験・共有
「Experience(体験・共有)」は、SNSでのシェアや口コミの投稿など、購入後の消費者体験を指す段階です。この段階での満足度が、リピート購入や口コミの拡散に大きな影響を与えます。消費者自身が商品などのライフハックを生み出し、新しい利用法やベネフィットを広めてくれるケースも増えています。
体験の拡散やシェアによって、新規顧客の獲得や裾野を広げる可能性を秘めています。
DECAXと他の購買行動モデルとの違い
DECAXは比較的新しい購買行動モデルといえます。これまで提唱されてきた購買モデルとの違いについてみていきましょう。下記関連記事では、購買行動モデルやマーケティングに役立つフレームワークについて詳しくまとめています。こちらも併せてご覧ください。
AIDMAとの違い
AIDMA(アイドマ)とはAttention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)のプロセスを通じて、消費者の購買行動を説明するモデルです。インターネット普及前のマス広告時代に登場したフレームワークで、購買行動モデルのベースとなっています。主に一方向的なコミュニケーションが中心で、消費者の購買までの流れに焦点を当てています。
一方、DECAXは購買後の体験も重視し、双方向の関係構築を意識している点が特徴であり、AIDMAとの明確な違いです。DECAXは現代のデジタル社会に適した消費者との関係強化に役立ちます。
AISASとの違い
AISAS(アイサス)は、AIDMAをインターネット社会に適応させたフレームワークです。「Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)」の6つの要素で構成されています。デジタル時代における情報収集「Search(検索)」と、「Share(共有)」の役割が加わり、強調されている点が特徴です。
一方DECAXは本モデルをさらに進めた形であるものの、消費者と企業との「Engage(関係構築)」や「Experience(体験・共有)」を重視している点が大きく異なります。AISASでは明示されない「企業と顧客とのより強いつながりを提供する場・段階」がDECAXには含まれています。
AISCEASとの違い
AISCEAS(アイセアスもしくはアイシーズ)は、インターネット普及後の社会における消費者行動を表すモデルで、先述した「AISAS」に「商品の比較」と「検討」という項目が追加されています。
「Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Comparison(比較)、Examination(検討)、Action(行動)、Share(共有)」の7つの要素で成り立っており、AISASに比べ、消費者の情報収集行動をより細かく分析できます。
DECAXはこのプロセスに対して、購入後の体験や関係構築の重要性を加味している点で差別化されています。AISCEASが詳細な検討プロセスに重点を置き、商品・サービスの機能やスペックに焦点が当たっているのに対し、DECAXは全体的な顧客体験を強調する中でも、商品・サービスそのものへの共感や共有、顧客との関係性がより重視されているのが特徴です。
SIPSとの違い
SIPS(シップス)とは、SNSにおけるユーザー同士の影響を考慮した購買プロセスです。「Sympathize(共感)、Identify(認識)、Participate(参加)、Share(共有)」のフェーズで消費者の行動を説明しており、主にソーシャルメディアでの消費者のアクションに焦点を当てている点が特徴です。
一方DECAXはSNSの持つ影響力も考慮しつつ、企業と顧客との関係性の構築や、実際の購入行動とその後の体験まで、消費者のより幅広い行動を含んでいます。SIPSがSNS領域における消費者モデルを表現するのに対し、DECAXはその先の行動や体験も含めた総合的な消費者理解に適用しています。
VISASとの違い
VISAS(ヴィサス)は、口コミやインフルエンサーの影響を取り込んだ購買行動モデルです。「View(視覚的な発見)、Interest(関心)、Sympathize(共感)、Action(行動)、Share(共有)」の要素から成るモデルで、消費者が他者からの影響を受けていることを念頭に置いた考え方です。
VISASが他人の意見やインフルエンサーによる影響を重視するのに対し、DECAXは消費者と企業間の直接的な関係性やエンゲージメントを強調しており、ここに大きな違いがあります。ただDECAXはインフルエンサーや他人からの影響を排除しているわけではないことに注意が必要です。インフルエンサーによる影響がある・ないに関わらず、消費者と企業間の直接的なつながりに焦点を当てています。
AIDEESとの違い
AIDEES(アイデス)とは、「Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Experience(購入)、Enthusiasm(心酔)、Share(共有)」の6つの要素に着目した、消費者の関与と体験を重視する購買行動モデルです。
特に購入後の「Enthusiasm(心酔)」「Share(共有)」がポイントで、「商品・サービスに感動や心酔するほど親しい人にシェアしたくなる」という消費者の心理・経験に焦点を当てています。DECAXは消費者と企業の関係構築を重視している点が大きく異なります。
DECAXの位置付け
DECAXは、従来のモデルと比較して、購入後の体験や双方向の関係構築に強く焦点を当てている点が特徴です。複雑化する消費者行動の全体を捉えるためのフレームワークで、柔軟性もあり、活用しやすいモデルといえます。
同モデルを有効活用できれば、企業は顧客との長期的な関係を築き、リピーターの獲得やブランドロイヤルティの向上を図ることが可能です。DECAXは、現代のデジタルマーケティングにおいて消費者の行動をより的確に捉えるツールとして、広く採用されています。
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DECAXを活用するときのポイント
DECAXを効果的に活用するためには、消費者が各ステップでどのように行動するかを理解し、それぞれの段階に適した施策を講じることが重要です。DECAXを活用するときのポイントについて、各段階ごとに解説します。
Discovery(発見):消費者のニーズを理解する
Discoveryのフェーズで重要なのは、ブランドの露出を最大化し、多くの消費者に発見してもらうことです。そしてそのためには消費者のニーズを的確に理解する必要があります。
具体的にはWebブラウザやSNSにおける検索キーワードやサジェストキーワード、関連キーワードなどから消費者の検索意図を分析することで、消費者の興味関心やニーズを把握できます。ニーズを理解し、そのニーズを満たすような情報を発信することで、消費者の注意をより強く惹きつけることができ、次のフェーズにつながりやすくなります。
Engage(関係構築):有益なコンテンツを提供する
Engageでは有益なコンテンツを提供し、消費者との信頼関係を築くことが求められます。メルマガ配信やSNSへの投稿、LINE公式アカウントの友達登録などを通して、高品質のコンテンツを継続的に提供することが大切です。役立つ情報や面白いコンテンツを発信し、気に入ってもらうことができたら、消費者と企業の関係はより深まっていきます。
ただこの段階で大切なのは、自社を売り込むことではなく、あくまでも「消費者にとって有益な情報を提供する」ということを重視して発信することです。定期的に質の高いコンテンツを発信できれば、次のフェーズに移行しやすくなります。
Check(確認):製品に関する具体的・定量的な情報を伝える
Checkの段階では、消費者が安心して購入できるよう、製品に関する具体的・定量的な情報を伝えることが重要です。製品に関する強みや魅力を伝える際には、必ず数字を用いて伝えましょう。
どんなにアピールしても曖昧な表現が使われていれば、消費者には響きません。たとえば「様々なテンプレートが備わっています!」ではなく、「200以上のテンプレートを利用できます!」などと表現することで、より正確な理解につながり、購買を促進できます。
Action(購買):ランディングページ・入力フォームを最適化する
Actionでは、消費者にスムーズに商品・サービスを購入してもらう工夫が必要です。具体的にはランディングページや入力フォームの最適化が効果的です。
ランディングページ最適化(LPO)は、コンバージョン率の向上を目的に、ランディングページのデザインや文言などを改善します。入力フォーム最適化(EFO)では、入力フォームの利便性の向上や、消費者に負担のかからないフォームを作成し、適宜改善します。快適に利用してもらうことで、顧客満足度の向上も見込め、SNSでの共有や口コミの投稿につながる可能性が高まります。
Experience (体験と共有):口コミを促す工夫を施す
Experienceのフェーズでは、利用者が思わずシェアしたくなるような工夫を施しましょう。たとえば、SNSでハッシュタグを用意し、気軽に投稿してもらえるようなキャンペーンを用意したり、購入完了ページで口コミ投稿を促したりすることで、ポジティブな体験を共有してもらいやすくなります。
投稿された口コミやシェアされたSNSへの投稿は、新規顧客の「Discovery(発見)」へとつながり、好循環を生み出します。ただポジティブな口コミだけが投稿されるわけではないため、その場合の対処法を考えておくことも大切です。
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DECAXを活用した成功事例
DECAXを活用した実際の例を紹介します。
NIKE
NIKEは、DECAXを活用したマーケティング戦略により、消費者との良好な関係の構築や、ブランドとしての確率に成功しています。「Discover」のフェーズでは、影響力のあるアスリートと提携することでインパクトのある広告を配信し、自社製品への関心や認知度を向上させ、「Experience」のフェーズでは、様々な専用アプリを通した魅力的なコンテンツ、トラッキングやカスタマーサポートサービスなどの提供によって、信頼関係構築に成功しています。
Webサイトでは包括的な製品情報をはじめ、レビューなど様々な情報を掲載することで(「Check」)、消費者に購買判断を促しやすくなっています。購入する際の負担も少なく(「Action」)、効率的なショッピング体験を実現している点もポイントです。
さらに、SNSを活用して消費者とコミュニケーションを取り、ブランドのファンを増やすことにも成功。NIKEは単なる製品提供者ではなく、消費者の日常生活に寄り添うブランドとしての地位を確立しています。
ライオン株式会社
ライオン株式会社は生活系全般のお役立ち情報を発信するオウンドメディア「Lidea」を運営しており、DECAXをうまく活用して成功を収めています。
同社は「Discover」のフェーズにおいて、消費者のニーズを把握するためにキーワードを分析し、SEO対策を行うことで上位表示に成功。流入数増加が実現することで、消費者に発見してもらう機会も増えます。「Experience」では、消費者が有益な関連記事を読むことで、企業に対する信頼度が高まり、良好な関係性を構築していきます。
「Check」のフェーズでは、製品の品質や安全性に関する詳細な情報を提供し、消費者が安心して製品を選べる環境を整えています。また、購入後の「Experience」を重視し、「Action」の段階では使用方法の提案やアフターサービスを充実させることで、消費者の満足度を高めています。消費者からの信頼を得ることで、リピーターの増加も期待できます。
まとめ
本記事ではDECAXの基礎知識をはじめ、各要素の解説や、他の購買行動モデルとの違いなどについて解説しました。
DECAXは、現代の消費者行動を理解し、適切なマーケティング戦略を展開するために欠かせないフレームワークです。従来の購買行動モデルと異なり、消費者との双方向のコミュニケーションや関係構築、購入後の体験に重点を置くことで、企業は消費者との長期的な関係を構築することが可能です。
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監修者
クラウドサーカス株式会社 石本祥子
新卒でコンサルティング会社に営業職として入社。3年で営業所長代理を経験後、ベンチャー企業を経て、クラウドサーカス社にマーケティング職として入社。
営業とマーケティング、いずれの経験もあることを活かし、クラウドサーカス社が提供しているMAツール『BowNow』において、マーケティングと営業に関するメディアの監修を含む、Webマーケティングの全域を担当している。